千葉県成田市 岡田 耕治さん

ミレーの生産者紹介ページ、登場回数ナンバー1?
スティックブロッコリーや空芯菜、ズッキーニ等…若手ながらバリバリとミレーにお野菜をわけてくださっている、岡田耕治さんの畑に今年もお邪魔してきました。

 お邪魔したのは、小松菜やほうれん草などの定番野菜から、見たこともないようなマイナーな野菜までが広く植わっている畑。
 腰からナイフを取り出し、スパッと収穫して見せてくださったのは、「ちぢみほうれん草」。普通のほうれん草よりも肉厚で、甘みが強い品種です。
「これから霜に何回か当てて“寒締め”にするつもりなんです。今年はあったかくてちょっと遅れてるけど、年明けには出荷できそうかな?」
 霜に当てて冷気にさらした“寒締めほうれん草”は、糖度や栄養価が豊富でお客様にとても人気があります。
「僕は栄養のこととかはよくわかんないんだけど、とにかく甘くてうまいんですよ。ほら、同じほうれん草でもこんなに違うの」
 普通のほうれん草と比べて見ると、なるほど、見た目からして全く違います。触ってみるとゴワゴワとしていて肉厚で、炒めたら本当においしそう!
「地面に広がるように育っていくから、手間もかかるし、正直やりづらいんだけどね」
 そう言って笑う岡田さんの畑には、前述の通りマイナーな野菜も植わっています。

(写真上)手際よくほうれん草を収穫する岡田さん/(写真下)下に見える濃い緑色の葉が「ちぢみほうれん草」。普通のものと比べると、同じほうれん草とは思えません
「この野菜は紅菜苔(こうさいたい)。やっぱり知らないかなぁ…何年か前にCMに出てたりしたんだけど」
 畑一面にずらりと背を伸ばした、紅色の茎をした菜の花のような野菜。オータムポエムとちょっと似ていますが、こちらはワラビのような味わいで、かなり印象が違うとのこと。
「本当は出荷したかったんだけどね、気温が高くて他の野菜が育ってきちゃったから、こっちには手が回らなくなっちゃって…花が咲いてきちゃってるし、もしかしたらもう出せないかもしれないね」
 岡田さんの畑には、こうして日の目を見ることなく去っていくお野菜がいくつもあるとのこと。素人目から見ると、なんだかとてももったいない気がしてしまいますが、岡田さんはこう話します。
「定期的に野菜セットを買ってくれてる人は、半ば押し売り状態で野菜を買ってくれてるわけでしょう?だからこそ、お客さんが箱を開けたときに『わぁっ』っていう新鮮な気持ちとか、目新しさを感じてもらえたらなぁってね」
 このような岡田さんの思いが、ズッキーニや空芯菜を始めとした、日本の食卓に馴染みのなかったお野菜の美味しさを多くのお客様へ伝えることができました。

(写真上)可愛らしい、お父さんの背中を追いかける後姿/(写真下)雑草に負けずにたくましく育つ、岡田さんの野菜

 数年前のインタビューでは、「野菜にも自分の子供のように愛情を注いでいる」とおっしゃっていた岡田さん。その頃は、農業をしていて辛かったことはあまりない、とのことでしたが、現在はどうなのでしょうか。
「未だにそれは変わらないねぇ。野菜作りでしんどいことはそんなにない。しんどいのは、嫁さんとのケンカくらいだね。笑」
 岡田さんは、奥様とお子様3人との5人暮らし。お子様たちは、こうしていつもお父さんが見守る畑で、泥んこになりながら遊んでいます。広い畑を闊歩する岡田さんの後ろを、とてとてと走ってついていく様子はまるでカモの親子のよう!見ていると自然と笑顔になってしまいます。
「僕は、子育ても畑作りも似たようなところがあると思ってるんですよね。工業製品みたいに、緻密な計算をして育てるんじゃなくてね…雨が多いときでも虫が大量に出たときでも、その土地本来の力で生き残っていけるような、そういう、たくましい畑を作っていきたいんです」

 危険にさらされたり手助けが必要な時はもちろん手を貸すけれど、過剰に力を加えたり、無理をさせるようなことはしたくない。この考え方は、子育てや農業だけではなく、岡田さんの生きかたそのものに通じるのではないか、と感じられました。
 世の中は不況と言われていますが、岡田さんはこんな時代だからこそ、『必要とされる農家』になって行きたい、と言います。
「こういう時代だけど、自分が必要なものには、お客さんもちゃんとお金を出してくれるでしょう。たかが野菜と思われるかもしれないけど、うち(みみずの会)にしかない、と思われるような野菜を作りたいんです。こういうところをわかってもらった上で、お客さんに選んでいただけたら幸せですね」

 今でこそ化学農薬を使わずに立派な野菜を育てる岡田さんですが、農業大学時代は栽培方法にこだわらずにバクバクと食べていたとのこと。
「あの頃は、何のこだわりもなかったですね。うまいうまいって何でも食ってた。でも、実際にこうして育てるようになってお客さんの声を聞くと、年輩の人たちが『昔食べた味だ』って感動してくれるんですよ。それを聞いて、あぁこれが本来の味なんだって気づいて…」
 化学農薬や化学肥料、除草剤を使用せずに野菜を育てていく。岡田さんが所属する「大栄みみずの会」には、同じ栽培方法で野菜作りをする生産者さんが集っています。
「定例会とかで皆で野菜を持ち寄るんですけど、やっぱり見ると、誰が作ったんだかわかりますよね。野菜も生き物だから、何かその人の人柄みたいなのが出るのかな?・・・まぁ、マニアックな領域になっちゃうけど。笑」
 尊敬している生産者さんはいますか?と聞くと、みみずの会のリーダーである板橋一夫さんの名前が返ってきました。

(写真上)岡田さんが所属する生産者グループ「大栄みみずの会」のメンバーと、奥様たち/(写真下)みみずの会のリーダーの板橋一夫さんです

「やっぱり板橋さんはすごいですよ。僕の場合、あれもやらなきゃこれもやらなきゃって、もういっぱいいっぱいなのに、板橋さんは何をやってても肩の力が抜けてますもんね。30~40年もやってる大ベテランだから、自分と比べ物にならないのは当然なんだろうけれど」
 就農したてのころは、みみずの会のメンバーの畑や野菜を見て、どうすればこうなれるのか、どこを直したらいいのか、試行錯誤の日々だったそうです。
「本とかを読んでても、実際にやってみるとやっぱり全然違うんですよね。気候とか地質とか。だから、こういう場合はどうするんですか、あれは何ですかって、もう、なんでも聞きまくってました」
 岡田さんのご両親は、農家ではありません。大阪から単身でこの土地にたどり着き、10年も経たないうちにこれだけ立派な畑を何枚も築き、奥様とお子さんを養うことができるようになるとは・・・。経過だけを書き連ねると何とも華々しいサクセスストーリーではありますが、その裏には、先輩に貪欲に教えを乞い、雨も嵐も全てを受け入れ、自分の糧にしてきた岡田さんの努力があるのだということが、お話を聞くことでようやく気づくことができました。

(写真上)いつもこうして、お父さんの側にいます/(写真下)スティックブロッコリーの畑の前で

 そんな岡田さんの頭を悩ませる唯一の種である奥様とのケンカですが、岡田さんは、奥様の存在こそが自分を現実に引き止めてくれるんだ、と言います。
「僕を1人にしちゃったら、いろいろと極端な方向に行っちゃっていたと思うよ。でもね、自分の好きなようにしていたら現実問題、家庭を守っていくのは難しいでしょう?嫁さんという碇(いかり)があるから、僕は現実離れし過ぎずにこうしていられるんだと思うですよね。本当に感謝しています」
 自分が信じる道にこだわり過ぎると、他の人の考えを受け入れることができなくなってしまう。人生訓にも通じるようなお話を聞きながら、岡田さんがこの先どのように年を重ねて行くのかが見えるような気がしました。
 岡田さんは、畑を耕しながら自分の魂も耕している。その土壌で育つものは、野菜も、人も、きっと、本来の姿で伸び伸びと生きることができるのでしょう。

「子供たちはまだ小さいし、畑に連れてきても何を手伝えるわけではないんですよ。でも、ああして側にいてくれることが自分の支えになってるんです。本当に自分は、周りに生かされてるんだなぁって思いますね」
 一番上のお子さんである双子ちゃんも、いよいよ来年は保育園!お子様と奥様と共に成長し続ける、岡田さんの野菜にどうぞご期待くださいませ。

聖護院大根の畑。傷やワレによって、半分以上が出荷されることなく畑に還って行きます。

左の写真は、岡田さんが今年初めて挑戦したという『聖護院大根』の畑です。聖護院大根はとても割れやすい品種で、なんと、6つ抜いてやっと1つ出荷できるかどうかとのこと。畑には、出荷できなかったものが浜に打ち上げられたクジラのように横たわっていました・・・。
「皆が育てたがらない理由がやっとわかりました」と岡田さんは笑っておられましたが、この様子を目の当たりにすると何とも神妙な気持ちになってしまいます。現場に行くと見えるものの大切さを、改めて感じた瞬間でした。
取材者:ミレー 内野
年月日:2009年12月12日

 
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