一途な百姓が作る旨い米

新米がおいしい季節になりました。いつもは玄米を食べている風子なのですが、この季節だけはピッカピカの新米のおいしさには逆らえず、ついつい真っ白なご飯をいっぱい食べてしまいます。今回はミレーの隣り町、成田空港に隣接する芝山町へおいしいお米の取材に行ってきましたよ~。

 

新米の季節、芝山町の秋葉義光さんを訪ねました。

ミレー風子)
刈り入れがもうすっかり終わった田んぼですが、この周辺はとてもいい所ですね。

秋葉)
里山の原風景が残っているでしょ?カエルやヘビ、昆虫などもたくさん生息しているんだよ。上に飛行機が飛んでいなければ、とても空港のすぐ近くにあるとは思えないでしょ。

ミ)
本当ですね。あぜ道にも野の花がたくさん咲いているし、ゆっくりこのあたりを散歩してみたくなるような場所ですね。

秋)
この辺りはうちの田んぼの他に、空港公団が所有している土地が多く、その休耕田を利用して、みんなにお米作りを体験してもらおうと「菱田オーガニックプロジェクト」というNPOを昨年、立ち上げたんだよ。ついこの前も、収穫祭をやったばかりなんだ。

ミ)
秋葉さんはずっと農業一筋でやっていらした方なのですよね。

秋)
俺は芝山の農家の生まれで20代の頃、成田闘争が始まったので、ずっと反対運動に関わってきたんだ。だからこの辺りで有機農業をやっている人のことは、みんな知っているよ。それだけ長く関わってきたからね。いろいろな形で野菜を売ってきたけれど、今は、「自然派ネットワーク」という産直グループの代表をやっているんだ。

 

生産物:米(コシヒカリ)
所在地:千葉県山武郡芝山町

芝山町の秋葉義光さんです。
芝山町の秋葉義光さんです。

 

里山、風景
里山の原風景が残っていて、とてもよいところです。

 

有機農業への転換と産直方式の導入、大きな変化でした。

ミ)
秋葉さんが、有機農業をやろうと思われたきっかけはどういうものだったのですか?

秋)
空港の反対運動をしている中で、ある時、北海道からきた女性が何気なく「これからは無農薬で野菜を作ることはできないだろうか」って言ったんだよ。俺自身もハウスの中で土壌消毒している最中に苦しくなって、やっとハウスから這い出て助かったという経験もあったから、できることなら農薬は使いたくないと思ってた。だから思い切ってやってみるかってことになったんだよ。でも30年以上も前の話だから、手本になるような農法もなくて、手探りでのスタートだった。失敗しながら、有機農業のやり方を学んでいったという感じだったかな。

ミ)
でも急に無農薬に切り替えて手間ヒマかけて野菜を作ったとしても、それを売るアテのようなものはあったのですか?

秋)
当時の産直は反対運動の支援活動でもあったからね。それで7人の農家の仲間たちに呼びかけて、1200人の消費者を対象にした産直をスタートさせたんだ。百姓と消費者と運転手、この三者三様が互いに共存できる方法を話し合ったんだ。農家は収入の五割を占める資材を減らしてできることなら中値(高値と底値の間の価格)で野菜を通年売っていきたい、消費者は安心して食べられる新鮮な野菜を安定した価格で買いたい・・・。それを保障し合えるようなシステムを作っていったんだ。

ミ)
ずいぶん早くから産直方式を取り入れていったのですね。

秋)
そうだね。顔の見える関係の中で野菜や米を作っていくことが基本だと思っていたからね。生産と事務、販売までみんな農家でやったよ。会員を増やすためにトラックに野菜を積んで東京に直接売りに行ったこともある。事務所もなくてさ、1年ごとに経理なんかの事務は各農家の持ち回り。出荷は週3回、各農家の軒先で人参担当の人が人参をさーっとケースに入れて、次に大根担当の人が大根をさーっと入れて・・・って感じでセットの野菜を作って運んだ。まぁ本当にいろんなことをよくやったなぁと思うよ。

ミ)
ではその当時から無農薬、無化学肥料に切り替えて、お米や野菜をお作りになっていらしたのですね。堆肥はどういうものをお使いになったのですか?

秋)
これもいろいろ試行錯誤があってね。松葉がいいと言われたらトラックに乗って松葉を海に集めに行ったり・・・。でも松葉は塩分が多いから牛糞の方がいいと言われたら牛糞で作ってみたり・・・。本当にあらゆることは試みた。その結果、今では牛糞や豚糞、籾殻、ぬかなどを混ぜ合わせて作るようになった。

ミ)
肥料もいろいろ試されたのですか?

秋)
そうだね。でも今はJAS認定のある有機肥料を使っている。というのは今は規制が多くて、使うものもいちいちお伺いを立てなければならないでしょ。木搾液なんかもそれを抽出する煙突の角度によって土壌改良剤として認められたりられなかったり、と意味のない基準がいろいろあって、そんなものにいちいち翻弄されたくないというのがあるから、規格のものを使うようにしているんだ。

ミ)
ここの田んぼで収穫されたお米の特徴を教えていただけますか?

秋)
減農薬、無化学肥料のコシヒカリで田植えの前に一度だけ除草剤を撒いている。この辺りは昔からの谷津田(やつだ:まわりを林がかこっていて細長い土地につくられた田んぼ)だし、湧水もあるし、粘土質の土だからおいしいお米ができるんだよ。多古米にも負けないおいしさだと俺は思っているよ。いろいろな農家があるけど俺は人間の生きていく基本である米を作らない農家は本物じゃないと思っているんだ。だって一番やってきたことの結果が正直にでるのが稲だからね。たとえば田んぼの中の窒素が多すぎると稲は倒れてしまうんだ。作り手のやり方に答えるかのようにね。手間をかけて薬に頼らず力のある土といい水で育った稲はやっぱりいいお米になるよ。それには自信を持っているんだ。

 

 

あぜ道の花
あぜ道には秋の花が咲いていて、とてものどかな風景です。

 

おしろいばな
おしろいばなが真っ盛りでした。

 

白鷺
白鷺が田んぼをゆっくり歩いています。

 

亀
この辺りには野生の亀など、様々な生物がみられます。

 

刈り入れの終わった田んぼ
刈り入れが終わって一段落の田んぼです。

 

谷津田
谷津田と湧水と粘土質の土がおいしいお米を育てるそうです。

 

自分が食べて旨い、安全だと思うものを人のために作っていく。

ミ)
秋葉さんがそこまでお米作りにこだわっていらっしゃるのはどうしてなのですか?

秋)
本物を食べてほしいからさ。今、袋に入って店で売っているお米なんて中味は本当の所、何が入っているかなんてわからないよ。混じりっけのないうちのコシヒカリをちゃんと食べて見てほしいね。こんなにお米が旨いのかって驚くと思うよ。

ミ)
今やっていらっしゃる休耕田のプロジェクトもそう言った思いの延長上にあるのですか?

秋)
そうだね。本物の味を知ってほしい。そして無農薬だからってそれを特殊なブランドにしたくない。できる限り多くの人が手頃な価格で買えるようになってほしいんだ。それだけ食べてくれる人が増えていくことにつながっていくからね。だからうちのお米も地元の学校給食でも食べてもらえたらと思っている。それに休耕田を利用して来年はもっと作付けを増やす予定なんだ。多くの人に田植えや稲刈りに来てほしいし、できることなら一番大変なその間の管理、草取りなんかにも来て欲しい。米作りは人間の基本だからできるだけ多くの人に関わって欲しいね。

ミ)
秋葉さんにとって農業ってどういうものなのでしょうか?

秋)
俺は農業とか農民とかいう言葉は嫌いなの。自分は百姓だと思っているから。俺の生き方にはそれ以外の選択はないね。自分が食べて旨いと思うもの、安全だと思うものを人のために作っていくのが百姓。それは決して自己満足ではできないし、利益だけを優先させてやっていくことじゃないんだ。

ミ)
私もお百姓さんの仕事って本当にすばらしいなあといつも思っているんです。そして私たちの食べ物を作って下さっていることがとっても有難いなあ・・・って。秋葉さんからみなさんにお伝えしたいことはありますか?

秋)
生産現場に来て欲しいね。今、白菜を作っているんだけど、今年はシン食い虫にやられて多分全滅かもしれない。そんな時、農薬をかけちゃえば虫は防除できるよね。でもそれを俺はしたくないし、しない。JAS認定というのは消費者にとっては一つの判断の目安になるものかもしれないけれど、それを守るために農家はとても大変な思いをしている。その結果が今、全滅しそうな白菜だよね。そういう百姓の現実も見てもらえたらなあと思う。無農薬の野菜がほしい、でも虫食いはイヤだ・・・そういう意識がいかに矛盾しているかってことが現場に来れば少しはわかってもらえるんじゃないかなって思うんだよね。

お話を聞いていて、秋葉さんは「骨のある男」と呼ぶのにピッタリな方でした。百姓一筋。生き方にも一本の筋が通っています。一見、怖そうで?取材を始める時はちょっと心配だったのですが?、とてもアツイ思いに溢れた方で、「百姓」という言葉がこんなに似合う方もいないんじゃないかなあと思いました。秋葉さんが長年の経験から手をかけて育ててきたコシヒカリ。風子もおいしくいただきました。みなさんもぜひお試し下さい。

取材:2004年10月5日

 

 

一面に広がる稲穂
ちょっと前までは、このように稲穂が一面に広がっていました。

 

語る秋葉さん
秋葉さんの「百姓」としてのプライドを感じました。

 

コシヒカリ
秋葉さんが手をかけて育てたコシヒカリ、ぜひ一度お試しください。

 
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