ミレー風子)
こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いします。
内山)
うちの豚肉は、昨年NHKのテレビ番組「たべもの新世紀」でも放送されたことがあるので、お客様の中にもご存知の方がいるかもしれませんね。さっそく豚舎をご案内しましょう。うちの敷地は各地域にけっこう分散しているので、取材のお時間もかかるかと思いますよ。
ミ)
バラバラに分散させずに、一ケ所に集めて管理する方が効率よくお仕事ができるのではないですか?
内)
豚はね、病気が怖いんですよ。伝染病にかかったら全部の豚舎ごとアウトでしょ?。むしろ分散させる方がリスクも少ないんです。それにうちは繁殖から肥育まで一貫した養豚を経営しているので、豚の成育に合わせて豚舎を移動させていきます。だから各地域に広い設備が必要なんですよ。放牧をする場所も草がなくなったら他へ移動するという方法をとっているので、一ケ所ではとても足りません。
ミ)
放牧しているなんて、養豚ではかなり珍しいやり方ですよね。内山さんはどのようなきっかけでこの方法を取り入れたのですか?
内)
私は養豚を始めてもう30年近くになるのですが、昔、見学にいらした方から「子供たちに安心して食べさせられる豚肉を作ってくださいね」と言われたことがあるんですよ。当たり前のことなのですが、その時にハッとしましたね。消費者の方を向いて生産しないで、何のための豚肉なんだろう・・・って。以来、豚舎の清掃を徹底させるなど衛生管理に気をつけて、健康な豚が育つように工夫してきましたが、なかなか思うような養豚をやることができませんでした。そんな時、イギリスのイーストアングリア地方へ視察に行く機会があったのです。そこで「家畜福祉」という考え方を初めて知ったことが大きな転機となったのです。
ミ)
「家畜福祉」とは聞きなれない言葉ですが、どういうことなのでしょうか?
内)
基本的には「食の安全は家畜の健康から」と考えられていて、家畜も感受性のある生命体だととらえているのです。だから豚ものびのびと放牧され、自由に草を食べていました。そんな清潔な環境でストレスなく育てられた家畜は皆健康で、病気にかかりにくく、安心して食べられる肉になるというわけです。その考え方にとても衝撃を受け、帰国後、ぜひ日本でもそれを取り入れていきたいと思ったのです。
ミ)
内山さんが豚の放牧を始める前から、日本でもそのような考え方で、放牧を実践している養豚業の方はいらっしゃったのですか?
内)
いえ、日本では前例がないんです。だから豚を放牧するために、ス
テンレスの囲いを取り寄せ、自分なりに改良するなど、試行錯誤で実践してみることから始めました。
ミ)
具体的にはどのような方法でやっていらっしゃるのですか?
内)
生まれた豚たちは授乳期間中、母豚の元で過ごします。人間の母乳と同じで初乳には免疫力を高める物質がたくさん含まれているようですよ。その1ヵ月後には匝瑳市(旧野栄町)の牧草地へ引っ越します。牧草地に「ハッチ」と呼ばれるステンレスで囲った組み立て式の小屋を建て、そこで20頭ずつ生活していきます。言わば豚の「庭付き一戸建住宅」のようなものですね。下には藁やおが屑を敷き詰め、豚は囲いの中を自由に走り回り、牧草を食べて育つのです。奥には部屋があってそこで休みます。屋根も開閉できるので気温によって風通しをよくするなど温度調整ができるようになっています。ここでたっぷり太陽の光を浴びて新鮮な空気を吸い込み、自然の風に吹かれて、幸せな子豚時代(?)をすごします。
ミ)
聞いているだけでも気持ちのよさそうな環境ですね。でもなぜ放牧させると美味しい豚になるのですか?
内)
自由に動きまわれてストレスがないというのもありますが、子豚の時期は胃腸が発達するんですよ。この時期に草や土をたくさん食べて運動することによって、骨格や筋肉も発達し、健康でいい肉がつきやすくなるのです。牧草地でたっぷりと1ヶ月半遊んで育った後は、清潔な豚舎に移動し、180日間かけて大きく育てます。小さい時に飼料を効率よく消化吸収できる強い胃腸ができると、その後の成長期に良い脂肪が蓄えられるのです。さらにいつも新鮮な空気を吸っているので、病気にもかかりにくくなるんですよ。
ミ)
脂肪が多いと美味しいお肉になるのですか?
内)
ただ多ければいいというものではありません。肉の旨みは脂肪の質と量で決まるのです。赤身(筋肉)の中に霜降り状態で脂肪がつくと美味しい肉になるのですよ。通常はその脂肪が2.5~3%と言われているのですが、うちの肉は4.2%も含まれているから、柔らかくて旨みのある肉なのです。
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