茨城県那珂郡 照沼 勝浩さん

 少し前のブログこちらや会員の皆様に毎週発行している「四季折々」でもお伝えしましたが、今年の1月30日(土)に、ミレーが千葉県からの委託を受け、「奇跡のりんご」で有名な木村秋則さんの講演会を企画・運営をしました。その会でお知り合いになる事ができた茨城県の(株)照沼勝一商店さんの商品を取り扱うべく、社長の照沼勝浩さんの取材に行ってまいりました。

 茨城県那珂郡は、強い海風により12~2月の温度は10~15%と干しいも作りに最適な環境です。この地で干しいもが作られてから、もう100年が経つそうです。またこの辺りで作られる干しいもは、なんと国内生産量の8割ほどを作っているほどの大産地になっています。
 照沼勝浩さんは、この地で200年以上続く農家の20代目。先代が始めた事業を引継ぎ、近隣農家さんからお芋を仕入れ、干しいもを製造をして来ました。しかし、国産より1/3程の価格の安い中国産が入ってきたり、多くのお芋の生産農家さんが高齢化が進み耕作放棄地が増えてきたり、何より土壌消毒で死んでしまった土で育ったお芋を使った干しいも作りに疑問を持ち、「圧倒的な商品付加価値を持つ干しいもを作る!」と、自ら大規模生産者になることを決意しました。

(写真上)柔らかく美味しさがつまった干しいも/(写真下)お日様の光を溜め込んでいます
  「耕作放棄地を吸収し、新たな栽培技術を自らのリスクで開発し、地域の生産者の模範になってお客様に選ばれる干しいもつくりをしていきたい。そして地元をもっともっと元気にしていきたい」という思いの下、2002年に農業生産法人として家業の農業を法人化。現在では200ヶ所、約60ha(約18,000坪)もの農地で、お芋だけでなく自然栽培のお米、トマトなどを栽培しています。
 しかし、今まで農薬漬けであった土地の地力を回復し、自然栽培によるお芋の栽培をするには、大変な苦労が待っていました。
 

(写真上)苗の定植も全部手作業/(写真下)木村さんを招いた時の集合写真

 生産法人になり、まず、一部の畑で土壌消毒を止め、小麦をうね間に条蒔きし、小麦の根の深耕効果と、うね間の抑草効果を期待してみたものの、その畑は初年度は全滅でした。それほど土が疲弊していたことを知り、照沼さんは愕然としたそうです。しかし、第36回日本農業賞で大賞を受賞した地元のベテラン農家さんと運命的に出会い、その農家さんが作ったお芋を食べて「自分のものと全然違う!」と衝撃を受けすぐに弟子入りし、本物の堆肥作りを学び始め、徐々に自然栽培に近づけていきました。

 その過程では、様々なクレームが。。。地元の農業改良普及所や試験場からは「土壌消毒をしないなら芋など作るな!」といった指導が入ったり、「雑草の種が飛んだり虫が発生する!」と近隣農家さんからのクレームが入ったり。どん底では、収穫量がピークの2割まで減ってしまいました。金銭的にも精神的にも苦しい時に「廃業」も頭をよぎったといいます。

  そんな時に木村秋則さんと出会い、木村さんがりんごを無農薬で栽培する為に歩んできた想像を絶する苦難の体験に驚き、深く感銘を受けました。木村さんの壮絶な人生に自らの境遇を重ね合わせ、自分の人生も間違っていなかったと確認した照沼さんは、木村さんに圃場に来てもらい指導をしていただきました。「いい堆肥は、山の土のにおいがするんだよ」「土が蘇ってくると、生える草の種類や姿が変わるんだよ」といった木村さんの言葉が、悩み苦しんでいた照沼さんの心にしみわたり勇気がわいてきたそうです。再び挑戦を続けた結果、今では干しいもの皮など、さつまいもの残さを利用した自家製の腐植堆肥を使用し、お芋を収穫した畑には麦や豆科の植物を植え、緑肥として翌年すきこむという循環が回り始めました。雑草が生えても除草剤を使わず手作業で抜いています。60haもあると、最後の雑草を抜き終わった時には最初の場所にもう雑草が生えていて、大変な苦労があるものの、地力を取り戻した畑では、収穫量は見違えるように上がっていきました。そんな照沼さんのことを、木村さんは最近の著書に自然栽培に挑戦する農家さんの例として取り上げています。

 照沼さんは大規模生産者となりながら自然栽培を行うだけでなく、他にも新しい取り組みを次々と行っています。まず「茨城県最高品質農産物研究会」を立ち上げました。ここでは有志の農家さんが集まり、残留農薬調査や水質や堆肥なども分析したり、収穫できた作物の硝酸態などの含有率や、栄養素など分析し、数値として安全で美味しい作物であることを明示できるようにしようとしています。またプロの料理人などにも試食をしてもらい、数字だけでなく第三者のプロからも美味しいというお墨付きを得れる仕組みを作ろうとしています。その他に、著名なデザイナーや地域の生産者、商工会と連携して「ほしいも学校」を設立。地域全体でほしいも栽培・生産に関わる様々な勉強をして本にしていこうとしています。「芋の葉」の粉末やペーストを練りこんだパスタを研究開発したり、ほしいものプリンなどの商品開発も取り組んでいます。「良い原料があれば、それを用いた加工食品は何倍も良いものが出来るんです」様々なチャレンジを続ける照沼さん。木村秋則さんを初めとした先駆者の指導を仰ぎながら、自然栽培を続ける照沼さんの所には、農業の可能性に夢見る新入社員が今年だけでも4人も入社しました。

(写真上)年季の入ったお芋の皮を剥く道具/(写真下)1つ1つ丁寧に、かつスピーディーに手作業で皮が剥かれます

(写真上)さつまいもスティック(紅東使用)は、カリッとしていておやつにぴったりです♪/(写真下)切り干し芋「雪の華」は、おばあちゃんもお子様も食べれる柔らかさが特徴的です

 お芋の生育に適した土作りにより美味しいお芋が出来ます。そして、お芋が出来てからが干しいも作りの本番です。まず、10月頃に収穫・選別したお芋を、段階的に湿度と温度を調整しながら貯蔵し糖度をじっくり14度まであげていきます。12月からはいよいよ加工が始まります。お芋を蒸し、ふかしたての熱々のところを手作業で皮をむき、ピアノ線で縦にスライスします。これを一番良い乾燥の状態にするため、遠赤外線の乾燥機を取り入れながら、天日干しして乾燥させていきます。加工の工程は昔ながらの道具を使い、現在も全て手作業で行っています。私も工場見学をさせてもらいましたが、皆さん、手作業で1つ1つ作っている姿を見て、「干しいも作りは機械では出来ない繊細なものなんだ」ということを知りました。 照沼さんは言います。
「干しいもだって炭水化物やビタミンB,C,Eを豊富に含み、栄養素、繊維質が多く、味も美味しい。圧倒的な付加価値を持たせれば、同じ芋菓子のポテトチップスのように、世界的商品にすることも夢ではない」

 照沼さんの作る干しいもは、素朴な味。おいもの甘さ、美味しさがぎゅ~っと詰まっていて、しつこくない自然の甘みと美味しさです。特に、主力商品の「雪の華」は、水分含有量が多くお子様でもおばあちゃんでも食べれる柔らかい干しいも。弾力があり、口に入れて噛んでいるうちに素朴で上品な甘みが口に広がります。繊維質がたっぷりで、満腹感も得れる美味しく健康にも良い日本の伝統食の干しいも。子供のおやつに、お茶受けにお試しあれ。

取材担当者:ミレースタッフ片岡
取材日:2010年2月22日
 
お客様の声
 


 
トラックバック
 
clear.gif