天然醸造の醤油 タイヘイ株式会社

タイヘイ株式会社の創業は明治13年。醤油の本場、八日市場(ようかいちば)(現:匝瑳(そうさ)市)にて、伝統的な手法で「タイヘイ醤油」を品質を第一に作り続けてきました。工場長の伊橋弘ニさんにお話を伺ってきました。

匝瑳市のタイヘイ株式会社を訪ねてきました。伝統的な醤油工場です。

ミレー風子)
こんにちは。今回、初めてタイヘイさんのお醤油をミレーでご紹介することになったので、どのような方法で作られているのか、いろいろお話を伺わせてください。

伊橋さん)
うちの会社は平成12年に120周年を迎えたのですが、実はそれ以前の1695年(元禄8年)、初代の太田平左衛門がこの地に酒造業として創業していたんです。会社の名前も太田の「太」と平左衛門の「平」を取って「太平」(タイヘイ)と名付けられました。ですから、現在仕込みに使われている木桶の中には「安政」と書かれているものもあるんですよ。立派な吉野杉で作られた大きな桶です。当時から今日までずっと我が社の醸造の歴史を見守ってくれています。

ミ)
ということは、今もその木桶でお醤油が作られているということですね。時間を経た木桶の中には見えない微生物がたくさん付着しているから、独自の風味を醸し出しているのでしょうね。

伊)
そうですね。伝統的な木桶仕込みで、時間をかけて醸造しているので、まろやかさと重厚な風味と深い旨みが特徴なんですよ。

工場外観
匝瑳市のタイヘイ株式会社にやってきました。平成12年に120周年を迎えた老舗です。

工場長の伊橋弘ニさん
工場長の伊橋弘ニさんに案内していただきました。
麹室
麹室ではスタッフの皆さんが懸命に働いていました。

ミ)
さっそくですがお醤油の仕込み方法を教えていただけますか?

伊)
まずは麹室で醤油麹を仕込みます。蒸してつぶした丸大豆と炒った小麦を砕いたものに麹菌を加えて、室温摂氏30度、湿度100%で3日3晩かけて発酵させます。丸大豆は遺伝子組み換えをしていないものを使用し、大豆と小麦はぞれぞれ国産のものを3割ずつブレンドしています。

ミ)
他には何も加えないのですか?

伊)
醤油麹ができあがってから、海水天日塩の食塩水(23%の濃度)を加えます。これが「もろみ」と言われるもので、お醤油の原形となります。このもろみを仕込み蔵で仕込むのです。さっそく仕込み蔵をご案内しましょう。

伊橋工場長さんに案内されて、大きな木桶が並んでいる仕込み蔵に入れていただきました。

醤油の出来具合を計るには「ベロメーター」が欠かせません。
木桶
なんと江戸時代から使われている木桶がずらっと並んでいます。

発酵している様子
表面に気泡が出て、ブクブクと発酵しています。

仕込んだばかりの桶
一見、お味噌を作っているかのように見えますね。これがお醤油になるなんて・・・

ミ)
大きな木桶がたくさん並んでいますね。

伊)
ここには江戸時代から使われている木桶が116桶並んでいます。直径と高さが9尺ほどあります。1つの桶から1Lビンで約1万本のお醤油が生まれるんですよ。

ミ)
ここはずいぶんひんやりとしているんですね。

伊)
そうですね。この蔵は温度も湿度もいっさい手を加えておらず、自然のままなんです。ですからこの時期は中の温度がとても低くなっています。「天然醸造」と呼ぶ製法は発酵・熟成時に温度を調整しないという規格があるんです。暑い夏場は発酵が活発に進むので、ブクブクと発酵している音が聞こえるくらいですが、寒くなると醤油桶の中も静かになります。

ミ)
向こう側とこちら側では桶の中の様子が違うんですね。

伊)
こちらはまだ仕込んだばかりです。最初はまだ味噌のような固まりになっているのですが、発酵が進むにつれ、液状のドロドロしたものになっていきます。

ミ)
醤油になったかどうかの出来具合は、何を目安に判断するのですか?

伊)
だいたい一年間という大まかな目安はありますが、細かい部分は成分を分析し、窒素分を調べています。同時に、私達の舌のベロメーター(勘と長年の経験による判断)が欠かせません。醤油の中にはおよそ20種類ほどのアミノ酸が含まれているのですが、旨み成分と言われるものはすべて窒素を含むアミノ酸なのです。そしてその窒素分が多いほど醤油は美味しいと言われています。発酵が進むにつれ窒素分は増えますが、いつまでも発酵させていては風味が落ちてしまいます。JAS規格では特級醤油の窒素分は1.5%ですが、うちの丸大豆醤油は1.6%になっています。

ミ)
ちょうどよく発酵した状態になってから、もろみを圧搾(プレス)するんですね。

伊)
はい。発酵具合を確認してから、もろみ液を布を敷いた四角い型の中に流し入れ、圧搾するんです。これにより固形物だけが布の中に残り、醤油となる液体部分は下に集められます。

ミ)
圧搾された液はそのまま醤油になるのですか?

伊)
このままではまだ微生物がたくさん残っていて発酵が進んでしまうので、一度殺菌します。でも、直接高熱を加えると風味が落ちてしまうので、蒸気を使って殺菌しています。その後、ろ過しておりを取り除き、ようやくビンに詰める充填作業に入ります。

昔ながらの製法で作られた醤油は、一味違います。ぜひお試しください。

ミ)
昔ながらの木桶が今も残っているなんて、本当にすばらしい仕込み方ですね。

伊)
ちょっと前に、新しい桶を特注して仕込み始めたのですが、新しい桶だけではなかなか同じようなお醤油ができないんです。その場合、古い桶で仕込んだもろみを加え、発酵のお手伝いをさせます。微生物がいい具合に桶に付着して同じような風味を出すのに5~6年かかると言われています。ですからこの創業当時からの木桶は私たちの財産でもあるのです。

ミ)
こうした手仕事の食文化を継承されている企業の生産工程を、少しでも多くの方に知っていただけるといいですね。本来のお醤油はじっくり醸造されて作られたものだから、そうでないものと区別して使いたいと思うのですが・・・。味にはどんな違いがあるのでしょうか?

伊)
まず原料に丸大豆を使っているので、脱脂加工した大豆では味わうことのできない油分が含まれており、それが独特の甘さを作っています。そして私たちが「後熟酵母」と呼んでいる、木桶についている微生物による発酵がありますね。市販されているお醤油は「即醸タイプ」と言って発酵の時に温度を加えたり、培養した酵母を加えるなど、人為的に発酵が早く進めているんです。でも我が社のお醤油は本当に自然のままにじっくりと時間をかけて発酵させているので、何とも言えない風味が醸し出されているんですよ。

新しい木桶
新しい木桶ではなかなか同じような醤油ができないそうです。古い桶が作り出す美味しさがあるようです。

作業の様子
伝統的製法を守り、受け継いでいます。

お雑煮
美味しいお醤油でお雑煮を作りました。深い風味をお楽しみください。

ミ)
すばらしいことですね。私も本物の食文化を大切にしていきたいし、きちんとした素材と製造方法で作られたものを使いたいといつも思っています。最後にミレーのお客様に一言お願い致します。

伊)
素材にこだわり、昔ながらの製法で作られたタイヘイのお醤油です。ぜひ本物の味をお楽しみいただけたらと思っています。そして、醤油は生き物なので、できたら冷蔵保存するなどして風味を落とさないようにお使いいただけたらと思います。

お料理を美味しく作るには何と言っても素材選びが大切です。特に味噌や醤油など基本的な調味料は本醸造のものを選びたいですね。歴史のある木桶の中で仕込まれた天然醸造のお醤油は、ミレーの無農薬野菜で作ったお料理をより美味しいものにしてくれることでしょう。皆さんもぜひお使いになってみてくださいね。

取材者:川端 えい子(風子)
年月日:2007年12月10日
 
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