「シャキ シャキ」「カリ カリ」。リズミカルに食する音が響くだけで味わいが伝わってきます。ご飯のおともにそっと一品。カレーを引き立たせたり、お酒のおつまみにもぴったり。普通のらっきょうとは異なり、十分に手間暇をかけて作った「らっきょう田舎漬」と醤油の絶妙な風味が加わった「たまり風らっきょう」。千葉県北総地域に連綿と伝わる「ころがし漬」で、薄塩で普通よりたっぷり時間をかけて作りました。らっきょうの旨みを引き出した逸品を現代に伝えています。

農薬を使っていない原料で乳酸菌をフルに活用

「 ここのらっきょうは本当にうまいよぉ 」
今回は、早川店長お気に入りのらっきょうのお漬物の生産現場におじゃましました。
成田空港に隣接するらっきょうの加工場。頭上では盛んに旅客機が飛び交っています。
その一方で、加工場敷地内の土中に埋められた「らっきょうタンク」では、空中とは裏腹に静か~に自然の乳酸菌がらっきょうに働きかけて旨みを引き出しています。
原料のらっきょうは、おもに成田市近隣で農薬を使わずに栽培されたもの。しかもその土地に息づく微生物や乳酸菌の力をめいっぱい活用して発酵。さらに化学調味料なども使わずに食品添加物不使用で作りました。だから、本来の旨みとほんのりした甘さ、そして酸味がにじみ出るのです。

「ころがし漬」の技法を受け継ぎ、薄塩で十分に時間をかけて作ったらっきょう(写真上)/三里塚物産さんの加工場です。ここだけひっそりとした別な空間。(写真下)
生活の知恵が詰まった「ころがし漬」
創業時に、実際に使っていた焼酎瓶

「北総地域に伝わるおばあちゃんの智慧がらっきょうには詰まっています。らっきょう漬作りはすべて地元のおばあちゃんたちから学びました」と佐山さん。
このおばあちゃんたちの先代から代々伝えられてきた伝統の技法が「ころがし漬」です。
「ころがし漬」とは、焼酎の瓶あるいはツボにらっきょうと一握りの塩を加え、家の土間に置いたツボを農作業の行き帰りなどに時折、けって転がすことで、均一に塩水が混じって旨みが出るようにするという、なんとも素朴なやり方です。

旨みの源!土の中のらっきょうタンク

この技法を受け継いでいる三里塚物産さんは、7月ごろに収穫したらっきょうを塩分濃度12~13%の塩水につけて2~3カ月間、乳酸発酵させます。
その後、発酵が落ち着いてきたらしばらくらっきょうを寝かせて、旨みを安定させます。味が落ち着くまでは塩水につけてから半年かかることも。いかに丁寧に、そして大事に作られているかが伝わってきますね。
驚いたことに現場に赴くと、らっきょうの入ったタンクは土の中に埋まっています。これもタンクのなかの温度を一定にして、らっきょうのうまみを引き出す乳酸菌や微生物の働きを活発化させるためです。自然の力をうまく活用して作るのも三里塚物産さんならではやり方です。
発酵を進める乳酸菌はたくさん種類があり、加工場の至る所にいるため、活動する環境によって味わいが微妙に異なってきます。菌の多様性が、逆に味わいに深みをもたらすのです。

現場でまず驚いたのが、土のなかに埋まったらっきょうタンク。
発酵が無理なく進んで、らっきょうの旨みが存分に引き出されます。

独自のやり方で深みのある味わいを醸し出す
完全に発酵したらっきょうは一本ずつ根っこを切り取った後に水洗い。一つ一つの工程でこころを込めて作られています。

佐山さんのらっきょう作りへのこだわりは、随所に表れています。完全に発酵したらっきょうは、一本ずつ根っこを切った後、一昼夜水につけて塩を抜きます。旨み成分を保ちながら絶妙な酸味と甘みのものに仕上がります。最後はざるを使って不純物を取り除く念の入れよう。いずれも手作業です。

一般的ならっきょうは、漬けるときに塩分を多く使って、最終段階で水洗いをします。しかし、この段階で塩分は減るものの、旨みも一緒に流してしまうことがあるそうです。
「一般のものや輸入されているらっきょうは重量の20%くらい塩を入れて作っているケースが多く見られます。でも当社は塩分濃度をかなり低めにして、時間をかけて作るので深みのある味が出てくるのです」と、佐山さんは胸を張ります。

はじまりは「もったいない」

佐山さんがらっきょうをつくろうと決意したのは、35年ほど前、価格下落で大量に廃棄されたらっきょうを目にしたことがきっかけでした。らっきょうを育てた方々の心中を察し、胸を痛めた佐山さんは、 「もったいない」との思いで、らっきょうづくりに着手することにしてのです。
「漬物にしたら有効に活用できるし、きっとお客様にも買ってもらえるだろうと、成田市のおばあちゃんに教わったんです」と振り返ります。

らっきょうのほのかな香りが漂う加工場を訪ねると、とっても丁寧に手作りされていることが分かります。手間暇をかけて乳酸発酵で作るのは、30年ほど前に創業して以来、皆さんに「安全でおいしいものを食べていただきたい」と一途に思い、提供し続けているから。

らっきょうづくりは昔ながらの手作業。ざるで不純物などを取り除き、一粒たりとも無駄にはしない。

三里塚物産さんのらっきょうは歯ざわりがよく、さっぱりしていて食べごたえがありました。ご飯はもちろんのことお酒のつまみにもぴったり。
一晩たつと味わいが微妙に変わってきて、手間暇をかけてしっかり手作りしたものの良さが十分出されていました。「美味しい自然食 らっきょう田舎漬」と書かれた素朴な立て看板が、佐山さんをはじめとした三里塚物産さんのこだわりと姿勢を物語っています。


三里塚物産さんのシンボルマークの一つである立て看板。らっきょう作りの歴史を見守ってきました。

三里塚物産さんは、お客様が24時間いつでもらっきょうを購入できるよう、加工場前に商品の入った冷蔵庫を設置しています。
週末の夜、お酒のおつまみが欲しいなぁと、私自身も取材の後で一つ購入しました。
こんな小さならっきょうの1つ1つに、伝統の技が生きているのですね。
皆さんも作り込まれた本物のらっきょうをご堪能ください。

取材者:松本 一直
年月日:2009年3月23日

 
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