千葉県成田市 堀越 一仁さん

 成田空港周辺は、70年代から無農薬無化学肥料での野菜つくりが盛んな地域です。そんな成田で地域循環型農業を日本で先駆者として進めてきた「かんらん車」の代表堀越一仁さんに取材に行って参りました。

 堀越さんと面識はありましたが、畑にお伺いするのは初めて。なのでお約束の時間より少し早めにお伺いしました。堀越さんが来る前に畑を見させていただいたのですが、まずびっくりしたのが畑に草がほとんど生えていないこと。普通、無農薬栽培であればこまめに草刈はするものの、どうしても草は生えてしまうもの。それが、本当に生えていないんです!もちろん、除草剤などは一切使っていません。畑だけでなく、ご自宅と道路の境目の生け垣の下も、草が1本1本抜いている跡があるんです。そうこうしている内に現れた堀越さんに畑の事を聞いてみても「抜いているんだよ。」としか言いません。しかし、その手入れが行き届いている畑は、普通の畑を見たことがある人なら本当にびっくりします。また、畝の間隔が広く、作物の種類も多種多様。普通、1反=約300坪の畑があったら、2~3種類ぐらいの作物が栽培されているのですが、堀越さんの畑は少量多品種で、本当に整然と作物が栽培されているんです。

(写真上)畝間が広く、雑草を見つけるのが困難なぐらい整備された畑/(写真下)道路とご自宅の生け垣の下も手入れが行き届いてほとんど雑草がありません
  いわゆる「輪作」をしながら常に10品以上を出荷できるようにしているとのことですが、本当に見事としか言いようが無い畑です。
 

(写真上)堀越さんの畑には視察が絶えないとのこと/(写真下)アブラムシが入らないメッシュのトンネル素材を日本で初めて実用化したのが堀越さんだそうです

 堀越さんの畑がある成田空港周辺地域は、化学肥料が全盛の1970年代に時代に逆行するように微生物の力を利用した無農薬無化学肥料栽培を推進するグループが立ち上がった地域です。お話をお伺いすると、なんと堀越さんのお父様はそのグループの代表をしていたそうです。その世代は無農薬栽培の50年選手でベテラン中のベテラン。堀越さん自身もそのグループに属していますが、若い世代でも勉強をしながら50年選手と同レベルの力が身につけられるように、平成10年に「地域循環型農業をすすめる会」を立ち上げました。毎月集まって堆肥作りや土作りの勉強をしたり、経験や勘だけではなく「数値」で良い作物つくりができるよう、メンバーの各々の畑や堆肥の土壌調査を毎年行ってきました。PH・窒素・リン・カリはもちろん、マグネシウム・石灰・硝酸態窒素などを外部機関に調査してもらい、前作に何を植えつけていて、現在の土の成分バランスがどういった数値で、今回作付の野菜が何だから肥料はこの程度にしよう、と数値に基づいて判断をしています。

  そして、2010年3月に「農事組合法人かんらん車」に衣替えをし、現在では成田市の学校給食用や市内のショッピングセンター、ホテルなどに出荷をしています。 「例えば、人間だってご飯だけ、あるいはおかずだけというのは嫌でしょ?ご飯もおかずもバランス良く食べたいよね?野菜も同じ。堆肥がご飯で、おかずが肥料、そのバランスが大事なんだよ。また、お腹がいっぱいなのにもっと食べろといって苦しいでしょ?野菜も同じで前作が終わってどのぐらい肥料が残っているかをきちんと調べて、今回の作付する野菜に必要な分だけ肥料を入れれば良いんだよ。単に有機物を使えば良いっていう話じゃないのはわかるよね?」 堀越さんのお話は「野菜も人と同じように見てあげればおのずと栽培の仕方もわかる」というもので、本当にわかりやすく堆肥や土の大切さを説明をしてくれました。

 堀越さんは早くから「地域循環型農業」を推し進める為に活動をしてきました。その代表が生ごみとして捨てられていた食品の残り。JA成田市の野菜加工センターや市学校給食センターから出る野菜くずは、日量1トンにもなります。また、市内のショッピングセンターや食堂などの食品残渣も大量に出ます。このような集められた年間300tにもなる食品残渣を、「かんらん車」のメンバーが中心となって、もみ殻、米ぬか、発酵菌を交ぜて発酵させ堆肥化をしています。作られた堆肥はを何年にも渡って外部機関に調査してもらい、発酵温度を上げたり、バイムフード菌という発酵菌を入れるなど工夫を繰り返し、現在では余計なものが含まれていない自然に優しい堆肥を作ることが出来るようになりました。このような活動を成田市も積極的にサポートしています。成田市の外郭団体が「堆肥土づくり実践館(野菜くずなどから堆肥を作る実験プラント)」を立ち上げ、そこの運営を堀越さんが委託を受け、3ヶ月かけて完熟堆肥を作り(最初の2ヶ月間は60℃~70℃の高温発酵が続くように管理するそうです)さらに農家でも完熟させ、今では大量の良好な堆肥を作れるようになりました。

(写真上)直売所に飾られた「野菜を食べた子供からのお手紙」/(写真下)あえて高温長期発酵をさせることで畑に必要の無い成分が取り除かれた堆肥が出来ます

  こうして給食の野菜残渣などを堆肥化し、その堆肥で育てられたニンジン、ジャガイモや小松菜などは、再び学校給食に提供されています。「学校給食の地産地消モデル」を日本で初めて実現したのも、堀越さんなんだそうです。凄いですね~。  また、畑ごと、作物ごとに合わせて完熟堆肥と有機肥料を配合した畑で育てられた野菜は、市内3ヶ所のスーパーなどの「かんらん車」専用コーナーで販売され、「通常のものより一回り大きく、味もよい」とお客様からも好評です。 2008年3月には、成田市のある公園で直売所の販売実験をし、大変好評だったことから同年9月に常設の直売所を立ち上げました。最近はある百貨店から「かんらん車コーナーを作りたい」という依頼があり、いよいよ販売に力を入れていく方向です。

(写真上)新潟県長岡市から送られた「感謝状」/(写真下)見事なまでに手入れが行き届いた小松菜です

 堀越さんは、「生産者としてすべきこと」を常に考えて様々なボランティア活動も行っています。例えば、平成7年の阪神・淡路大震災の時には、避難地域100箇所全てに行き渡るようさつまいもを100箱用意し、1つ1つの避難地に届くよう手配をしました。平成16年の新潟中越地震の際には、生活再建に取り組む市民を応援するために、山古志村を取り上げた「掘るまいか」といった映画の上映を実施し、そこから得たお金を義援金として送っています。今でも毎年、長岡市に編入された山古志に出向き、草刈の手伝いをしているそうです。「生産者が出来ることはすべき」と事も無げに言う堀越さん。しかし、言うは易し、行うは難しで、実践されているお姿に感銘を覚えました。
 成田空港周辺地域は、「JAS認定有機農産物」という制度が出来る前から、ず~っと無農薬無化学肥料で野菜を栽培してきた農家さん達が集まっている地域です。そのような農家さんの中で、堀越さんが率いるかんらん車さんのお野菜が扱えることになったことは、嬉しいことですね。まずは、小松菜を皆様の食卓にお届けいたします。

 果物や加工品のように誰でもすぐに違いがわかる野菜ではございませんが、よくよく注意して見て下さい。スーパーなどで売っているお野菜と比べて、明らかに見た目、何より「美味しさ」と「持ち」が違います。ミレーのお仲間に、また強力な仲間が加わりました。是非、かんらん車の小松菜、ご賞味下さいね。

取材担当者:ミレースタッフ片岡
取材日:2010年6月2日