鮭の白子

北海道の常呂郡(ところぐん)より、「日本一小さなくんせい屋」をやっている三尾谷ゆうとさんが風子のお店にやってきてくれました。三尾谷さんはトルマリン鍋の作者天川さんの古くからのお友達ということで「風子さんに似ている人がいるので会ってみたら?」とご紹介いただきました。そう言われると、一体どんな人なのかなあ・・・?とお会いするのがコワイような楽しみなような・・・。でもお店のドアを開けた瞬間から、お顔も知らないのに「あっ、この人が三尾谷さんに違いない!」とわかってしまったんですよ・・・。やっぱり同じような匂いがするのでしょうかねえ?!。さっそく似ているもの同士?北海道での生活、おいしい白子の燻製についてなどなどたっぷりとお話をお聞きしました。

 

軽ワゴンではるばる北海道からやってきました。

風子)
この軽ワゴンで北海道からいらしたのですか?

三尾谷)
そうですよ。この車にたくさん燻製などを積んできたんですよ。私の住んでいる常呂郡から苫小牧までは400キロ近くあるので港まで車で走って、あとはフェリーに乗って、茨城県の大洗港までやってきました。着いてすぐは天川さんのお宅に泊めていただいて、それから東京の友人の家や実家などをいろいろ回ってきて、今日の夕方のフェリーで帰るところです。

風)
三尾谷さんはもともと北海道の方なのですか?

三)
いえ、生まれは栃木県の烏山町という所です。東京にいたこともありましたが、田舎暮らしがしたくて、以前にも釧路などに住んだことがあるので、5年前思いきって常呂の方に引っ越しました

風)
北海道では燻製作りか何かで食べていこうというお仕事のあてなどがあったのですか?

三)
いえ、具体的なことはあまりありませんでした。東京にいた時も職業を転々としていたんですよ。中でも体を動かすことが好きだったので土方はけっこう長くやっていました。それで少し貯金ができたので北海道に移り、とにかく魚が旨いのに感動して、これでおいしいお酒が呑めたらいいなあと思って魚の加工とかいろいろ挑戦してみたんですよ。でも中々うまくいかず、貯金もすっかり使い果たしてしまいました。

 

 

生産物:鮭の白子燻製
所在地:北海道常呂郡

 

三尾谷さん
北海道から軽ワゴンではるばるやってきた三尾谷さん。

 

笑顔の三尾谷さん
とても気さくで楽しい方でした。

北海道に移り日本一小さな燻製屋になりました。

風)
どうして移り住んだ先が北海道だったのですか?

三)
樺太の少数民族である「ウィルタ族」という人たちがいるのですが、彼らのことを紹介した「ゲンダーヌ」という本があるんです。ウィルタ族は盗むという言葉がない生活をしているんですよ。ものの所有権というものがない、必要なものはみんな自然からいただくという価値観を持っているのです。そんな暮らし方に少しでも近づきたいなあと思ったことがきっかけでしょうか。人間中心の物質文明ではない、自然と共に生きる暮らしがしたいなあと思ったんです

風)
私も先住民の人たちが、言葉や文明よりも自然界に存在する神様を信じて生活していることにとても心惹かれます。自然をおそれると共に敬うということが、都会で暮らしていると本当にわからなくなってきますよね。草や木や花や鳥・・・それら全てに神が宿り、人間の命の営みも自然界の営みの一つなんだと思える暮らしは何と謙虚で豊かなのかなあと・・・。
いただいた白子の燻製の袋にも「きれいな海を子供たちに!合成洗剤・原発・農(毒)薬をなくそう!」と書いてありましたよね。手作りラベルというのは作り手の思いがにじみ出てくるものなので、あの手書きの白黒ラベルはなんだかとっても三尾谷さん自身がよく表れているような気がします。

三)
70年代の後半から日本でもヒッピームーブメントのようなものがあって、各地に血縁を越えて一緒に暮らしていこうという「コミューン」のようなものが生まれました。彼らの生活は必要な分だけ稼ぎ、共同で分配し、できるだけ環境に負担をかけないというシンプルなものでした。菜食主義であったり、自然を守ろうというテーマでお祭りをしたりもしていました。僕の仲間にもそういう奴らがいろいろいたりして、やはり自然に対しては無関心でいられなかったですね。食べ物一つとっても添加物だらけで、特に練り製品なんか、無添加のものがとても少ない。せっかく旨い魚があるのにもったいないなあと思ったんですよ。

風)
それで魚の加工を考えられたのですか?

三)
そうですね。海を見ながらおいしい肴と一緒においしい酒が呑めたらいいなあと思って・・・。初めて北海道に来た時、いわしの旨さに感動しました。全然生臭くないんですよ。だからその魚を何とか加工してみようと、最初はサロマ湖で捕れるキュウリ魚(ししゃもの原型の魚で匂いがキュウリに似ていることからそう呼ばれている)を魚肉ソーセージにしようと試みたんですが、みごとに失敗してしまいました。鮭は北海道でたくさん採れるのですが、白子はあまり利用価値がないので捨てられているんです。白子を加工する手間よりもお金になる鮭をどんどん捕った方がいいと思っているのかもしれませんね。でもまだ食べられるものを捨てるなんてもったいないと思って、それを利用しようと思ったのです。

風)
では鮭の白子の加工品というのは北海道でも珍しいものなんですか?

三)
そうですね。白子を加工しようとする人はあまりいないようですね。おまけにたった一人で生産、加工、販売しているのですから、僕の所は多分日本一小さな燻製屋になるかと思います。

 

 

 

白子の燻製酢漬け
鮭の白子燻製酢漬です。もちもちしていて歯ざわりがとってもいいです。

 

白子燻製アップ
見た目はチーズのようです。

白子は栄養たっぷり、若返りパワーがあるんです。

風)
燻製というのはたくさんあるのですが、本当に白子の燻製というのは三尾谷さんにいただいて初めて食べました。本当のことを言って私は白子そのものは苦手なのですが、食べてビックリしました。全然臭くないし、これって本当に鮭の精巣・・・?と思ったくらいおいしいものでしたから。この味を確立するまではずいぶん試行錯誤されたのでしょうね。

三)
そうですね。白子の燻製自体、あまりないので、味や作り方のお手本になるものがなかったのです。でも、もともとアイヌの人たちは「食べられるものは全部丸ごと食べる」と考えているから、白子も干して保存する習慣などがあったようですね。ただ白子そのものは生臭いので、中々納得のいくものが作れませんでした。ある時、燻製にしてから酢と合わせることを思いついたんですよ。それがとてもおいしくて、ようやく味が落ち着きました。

風)
鮭の白子の燻製の作り方を具体的に教えていただけますか?

三)
白子は冷凍になっているのでそれを解凍してから血抜きするため流水につけ、その後、塩水に漬け込みます。それから白子の旨みが水に出てしまわないようにポリエチレンの袋に入れてボイルした後、半日くらいかけて乾燥室で風乾させます。「鮭白子から揚用」はこれをブツ切りにして真空パックにしたものです。この後、12時間くらいスモークをかけてから、有機米酢、自然塩の調味液に1週間以上漬け込んでからミンチにして油と合わせたものが「鮭白子のスモークマリネ」、ブロックのものをスライスしたものが「鮭白子燻製酢漬スライス」です。

風)
それが店主おすすめの白子の3点セットですね。文句なしにおいしい燻製ですが、店主の方からもおすすめの理由を教えていただけますか?

三)
はい。白子はたんぱく質が豊富で細胞の若返りパワーである核酸がとても多く含まれていて、栄養たっぷりなんですよ。またこの燻製は化学調味料などの添加物を一切使わずに自然塩、純正醤油、自然酢、無農薬純米酒など、調味料もよいものを厳選して作っています。市販の練り製品や加工品はとても添加物が多いのですが、私は防腐剤など使いたくないので、殺菌についても、真空パックをしてから80度で加熱殺菌をするという方法をとっています。そうすると常温でも3ヶ月は保存できるんですよ。

風)
私はあまり加工品は食べないのですが、でもこの燻製には本当に感動しましたよ。それにここまでいい調味料を使っているのにこのお値段なので、それにもビックリ。失礼ながらあまり儲からないだろうなあ・・・なんて・・・。でも価格の面でも作り方の面でも安心してみなさんにもおすすめできるものですね。おすすめの食べ方があったら教えて下さい。

三)
「から揚げ用」は片栗粉をまぶして、ほんの1分、衣が色つくまで油で揚げてからレモンを絞ってそのままどうぞ。鳥のから揚げみたいでおいしいです。そのまま鍋や味噌汁の具にもなります。「燻製酢漬けスライスは」は玉ねぎなどと一緒にマリネにしたり、カナッペに乗せたり・・・。しこしことした歯ごたえがあって、そのままでもとってもおいしい。「スモークマリネ」はとっても地味なのですが、ひき肉感覚でチャーハンに入れたり、そぼろご飯にしたり、サラダに混ぜたり、マヨネーズや味噌で和えて、変わりドレッシングにしてもおいしいです。それぞれが自信をもっておすすめできる白子3点セットですね。

 

鮭白子のスモークマリネです。
鮭白子のスモークマリネです。

 

スモークマリネアップ
白子には「若返りパワー」が含まれているそうです。

今後も旬の魚を使っていろいろなものを作ります。

風)
他にもこれから加工品として作っているものがありますか?

三)
その時に捕れた旬の魚を使って、海の天気と相談しながら作っていくのですが、6月中旬からホッケの燻製とソーセージ、7月はホタテやホヤの加工品、8月は鱒の燻製とソーセージ、9月は鮭の燻製とソーセージが出せる予定です。

風)
その時々で水揚げされたものでおいしい加工品を作るのですね。ミレーのお客様にも順次お届けしていけるといいですね。ソーセージなどももちろん無添加で作っていらっしゃるのですよね。

三)
もちろんそうです。ホッケは骨、尾などをブツ切りにしてそのままミンチしています。鱒や鮭のソーセージは頭、骨、尾を柔らかく煮てすりつぶしてから、身と一緒にミンチしています。どれも自然塩だけで調味した丸ごとのおいしさです。食べられるものは全部いただこうと思っているので、骨なんかも捨てたくないんですよね。

風)
魚をさばくのもご自分でやっていらっしゃるとお聞きしたので、本当に「全て手作り」なんですね。そう言えば加工する小屋もご自分でお作りになったとか。小屋まで手作りなんて、何でもできてすごいですね。

三)
器用貧乏という奴ですか。何でもやってみるけど中々お金にはならないですけどね・・・。

風)
あはは。私と一緒です。こういう時代ですから全うなことをして稼ぐというのは本当に難しいものですよね。でもお好きなことをやっていらっしゃるので楽しそうでいいですね。好きなことをしながら暮らしていけるというのは実はとっても有難いことなんだなあと、この頃思えるようになりました。ところで三尾谷さんがこれからやっていきたいというようなことはありますか?

三)
添加物なんか入れなくてもおいしい加工品が作れるんだから、そんなことを教えられるような、食べ物塾みたいなものが作れたらいいなあと思っています。知床の方に古い廃校があるんですよ。そこを借りて手直ししてもし使えるようだったら、そこで泊まって作って、一緒に呑んで・・・というような楽しい場所を作っていくことが夢ですね。

風)
とっても楽しそうな夢ですね。私も行きたいな。そういう場創りみたいなことがお好きなんですね。最後にみなさんにお伝えしたいことが何かありますか?

三)
化学調味料の味にごまかされたりしないで、本当の素材のおいしさを知ってほしいと思っています。そしていつまでもキレイな海を見ながら旨い酒が呑みたいから、海を汚す合成洗剤や原発、農薬なんかはなくしていきたいね。それと北海道に遊びに来ることがあったらぜひ寄って下さいね。どなたでも大歓迎ですので。

店にふらりとお立ち寄りいただきながらお話することができたとても楽しいインタビューでした。多分いろいろたどっていけば、共通の知人もいっぱい出てきそうです・・・。
自然を身近に感じながら、納得のいく暮らし方を選んでいく・・・というのは大変なことかもしれませんが、とても楽しそうです。みなさんも北海道の大自然を思い浮かべながら、「海歌洞」の手作り白子燻製をぜひ召し上がって下さいね。

取材:2004年5月28日

鮭のソーセージ
鮭のソーセージはお酒のおつまみにも最適です。

 

ソーセージ
魚をさばくところから燻製まで全て手作業でやっています。