美味しくできるから搾り方は変えません。
風子は佐原の町が好きなので、取材で佐原に行く時は、取材と散歩とランチをセットにするようにしています。油茂製油(あぶもせいゆ)さんのお店は、佐原の中心部を流れる小野川を渡る忠敬橋のすぐ近くで、とても素敵な町屋作りの建物でした。
佐原市の油茂製油に行きました。手作りごま油をご紹介します。

 

ミレー風子)
こんにちは。小野川の近くでとても雰囲気のある建物ですね。

並木)
うちは創業から350年以上、製油一筋でやってきました。私で22代目になります。この店も明治25年に建てられた古い建物なんですよ。

ミ)
今日はごま油を作っているところを見学させていただけるのですか?

並)
ごま油は融点が0度くらいなんです。それで冬の間は凍ってしまうので、1月から3月までは工場も閉鎖しています。だからあいにく今日はお見せできないのです。それにごま油作りはとても汚れるし大変な仕事なので、見学できるようなものでもないんですよ。

ミ)
残念ですね。でも作り方などを教えていただけますか?

並)
うちは昔から「玉締め一番搾り」のごま油を作っています。玉締めというのは古式搾油法の一つで石臼を使って丁寧に油を搾っていく方法です。水圧によってみかげ石に圧力をかけ、ごまを搾っていくのですが、常温で圧力も少ないので風味が失われないのが特徴です。

ミ)
ごまにそのまま圧力をかければごま油ができるのですか?

並)
いいえ。搾る前にもかなりの工程があるんですよ。うちのごま油には中国産の良質な白ごまを使っていますが、まずそれを丁寧に選別してから、直径1mある鉄釜で1時間かけて炒ります。その後、冷ましてからごまを砕きます。それから木桶の中に入れて3分ほど蒸します。それを麻袋に入れて、やっと搾油できるというわけです。

ミ)
ただ炒って搾るというわけではないのですね。

並)
そうですね。生搾りのものだったら炒らずに生の状態で搾るのですが、ごまは炒って香りが出るので生搾りの場合、色も香りもありません。

 

 

生産物:ごま油、ラー油
所在地:千葉県香取郡佐原市

 

油茂製油正面
歴史の町、佐原市にやってきました。油茂製油は趣のあるお店です。

 

並木茂徳さん
22代目の並木茂徳さんにお話を伺いました。

 

提灯
お店の内外も、とても雰囲気のあるものが並んでいました。

 

一番搾りにこだわりがあって、20キロのごまから7キロのごま油しか搾れません。

 

ミ)
搾った後はどうするのですか?

並)
ごまの搾りカスは家畜の餌に回しています。搾った直後のごま油は、そのままではまだカスが混じっているので、一晩放置して沈殿するのを待ちます。それから、こうぞで作った昔ながらの和紙で漉していくのです。搾油もろ過も決して無理な圧力をかけたりしないので、とても時間がかかります。

ミ)
その一連の作業が終わるのにどのくらい時間がかかるのですか?

並)
選別からろ過まで4日間かかります。それに20キロのごまから7キロのごま油しか取れないんですよ。

ミ)
えっ?半分以下しか取れないのですか?

並)
ごまは油分が多く、半分以上は油なのですが、うちの製法では一番搾りの油だけを使っているので、それくらいの量しか取れません。それに搾るのも少しずつしかできないので、二人がかりで一日に4回搾っても一ヶ月に最高で10トンしかできないんですよ。これは大手製油会社に比べてとても少ない量なのです。

ミ)
二番搾りなどは使えないのですか?

並)
大手の製油会社は、たいてい二番搾りのものも使っています。でも匂いもキツイし、後味も悪いんです。やはり一番搾りの香りにはかないません。それに油をたくさん搾るために、溶剤を使って水と油を分離させている場合もあるようですよ。その方が簡単に搾れるからです。また、脱臭や脱酸のために薬品を用いる場合もあるようです。でもうちは昔ながらの製法なので、もちろん添加物や化学調味料、薬品などは一切使っていません。

ミ)
漉すのもゆっくりなのですか?

並)
そうです。和紙の筒は二重になっていて、自然にろ過されるのを待ちます。その方がえぐみが出ないし味がいいんです。

ミ)
このような方法で作っているごま油屋さんは、日本国内に他にもあるのですか?

並)
全国でもごま油の玉締め搾りをしているのはほんの数軒だと思います。この方法は手間がかかるし量は取れないし、それに、原料となるごまそのものに油分が多いものでないとたくさんは搾れないんです。なたね油だと油分が30%と、ごまよりも少ないので、やっているところは1件だけだと思いますね。

ミ)
昔ながらの方法だと道具も古いものなのでしょうね?

並)
そうなんですよ。大正時代のものを修理しながら今も使っています。

ミ)
そういう使い込まれた昔ながらの道具をそのまま使って作るということも美味しさの秘訣なのではないでしょうか?

並)
結果的にはそういうことですね。玉締め搾りは圧力が低いので熱による酸化が少なくなります。それにごまを炒る鉄釜も開放釜(フタがない釜)で羽を回しながら炒るので、余分なものが揮発していい状態になっていきます。また和紙によってゆっくりと入念にろ過されるので、これらの伝統的な製法がうちのごま油の美味しさの秘訣にもなっています。

 

 

店内
贈り物用のごま油は、素敵な包装です。

 

和紙の包装
色とりどりの包装のラー油です。

 

「どっちの料理ショー」
油茂製油のごま油は、日本テレビの「どっちの料理ショー」でも紹介されたそうです。

 

油茂
「江戸初期創業」、建物は「明治25年」築と書いてあります。

 

道具箱
店内の家具は「安政三年」と書かれています。歴史あるものがたくさんあります。

 

伝統的な製法で作ったごま油とラー油です。ぜひお試しください。

 

ミ)
ごまラー油も自家製のものなのですか?

並)
そうです。うちの玉締め一番搾りと生搾りごま油に唐辛子、花山椒、桂皮、八角、陳皮、長ネギ、にんにく、しょうがなど8種類の香辛料を加えてゆっくり煮出して漉したものです。こちらはギョーザやラーメンなどにぜひお試しいただけたらと思っています。

ミ)
並木さんのお宅は天ぷらなどもごま油で揚げていらっしゃるのですか?

並)
そうですよ。ごま油で揚げた天ぷらはカラリを揚がるし、香ばしくて美味しいですね。

ミ)
普通のなたね油の中に、ごま油をほんの少し入れて天ぷらを揚げるだけでもとても香ばしく美味しくなりますものね。ごま油だけなんてとても贅沢な天ぷらですが、私も今度やってみますね。それにしても本当に全て手作業でお作りになっていてすばらしいですね。昔からの伝統的な方法にこだわって作り続けていらっしゃるのはどうしてなのでしょうか?

並)
この方法が一番美味しいものができるからです。だから変える必要がなかったんですね。美味しいままに作り続けていきたいのですよ。効率を追い求めたら絶対できないです。うちのやり方は本当に効率悪い仕事ですから。だけど創業以来この方法一筋なのは、やっぱり美味しいからです。大企業の論理には決してない方法を日々実践しているのだと思っています。

ミ)
最後にミレーのお客様に何か一言お願いします。

並)
丁寧に昔ながらの方法で作っているごま油です。一昨年には日本テレビの番組「どっちの料理ショー」でも紹介されました。ごま油は酸化しにくく、リノール酸を豊富に含んだ良質な油です。純正の最高級のごま油の端麗な色と香りと芳醇な風味をぜひご賞味ください。

油茂製油さんの店先には古い道具入れや銭入れなど、昔から使われていた歴史のある家財がそのまま残っていて古道具の大好きな風子にはたまらない場所でした。

それにしても今時、こんな作り方をしているお店があるんだなあと本当に感動して帰ってきました。丁寧に作られたものには本物の美味しさがあるということを今回もまた再確認できました。

みなさんもぜひ油茂さんのごま油と最高級ごまラー油をお試しくださいね。

取材:2006年2月13日

 

 

ごま油
丁寧に手作業で搾ったごま油です。

 

ラー油
ごま油に唐辛子など8種類の香辛料を加えて作ったラー油です。

 

ぜひお試しください
伝統的な製法にこだわってつくります。ぜひお試しください。