私市醸造 昔ながらの木桶製法

ミレーのある千葉県の北総地帯は農業が盛んですが、今回、取材に行ってきた鎌ヶ谷市は、都内へ通勤する人たちのベットタウンとして発展した街で人口も多古町よりずっと多いです。そんな街の一角に私市醸造は工場を構えています。研究室長の北さんに、工場の中を案内していただきました。

鎌ヶ谷市の私市醸造を訪れました。伝統的製法で酢などを作っています。

ミレー風子)
こんにちは。ミレーのお客様からも調味料をいろいろ揃えて欲しいというご要望が多かったので、今回、お酢の販売ができるようになって私も嬉しいです。今日は工場の中まで見学させていただけるとのことで楽しみにしてきました。

北)
うちは大正11年頃から始まった食酢製造の会社で、最初は関東地方の江戸前寿司を作るお寿司屋さんに向けての酢を製造したのが始まりでした。その後、昭和21年にまだ農村地帯が広がるこの場所に縁あって移転し、以来、ずっと酢を中心に製造販売をしてきました。

ミ)
私市醸造では本格的な桶仕込みの方法を、今も守り続けているとお聞きしたのですが・・・。

北)
そうなんです。お酢の製造方法は大きく分けて2つあり、一つは通気法という近代的な発酵方法で、もう一つは静置法という伝統的な木桶を使った発酵方法です。静置法は人間の背よりも大きな杉の木の桶を使ってじっくりと発酵させていくので、ほんのりとした木の香りが残る上品なお酢に仕上がります。うちでは創業以来使い続けている木桶が未だに残っているんですよ。

ミ)
今でも木の桶を使ってお酢を製造している食酢メーカーは、他にもあるのでしょうか?

北)
ありますが、本当に少なくなっていますね。大手メーカーは量販する必要があるので、木桶では採算が合わないでしょう。木の桶を造ってくれるメーカーも今ではごくわずかしか残っておりません。うちもそのうちの一社にお願いして、特注の桶を造ってもらっています。お酢の旨みは原料由来のほどよい香りと、よい発酵による風味が決め手になります。木桶は発酵には時間がかかりますが、自然な熟成によりコクのあるまろやかな美味しい酢ができるのです。

北さんと木桶
私市醸造の北さんに工場内を案内していただきました。大きな木桶がそびえ立っています。


工場の中
工場の中は近代的な設備と木桶のような伝統的なものが入り混じっています。


タンク
でき上がった酢を保管するタンクです。
ミ)
お酢の製造方法を簡単に教えていただけますか?
木樽で発酵
静置法の熟成桶です。

北)
まず静置法からご説明しますね。吟醸酒の酒粕を3年間かけて熟成させた後、熱水で溶かし圧搾機にかけて絞ります。そこにアルコールと種酢と水を加えて、木桶の中で発酵させます。発酵している間は中の温度も35度近くになります。桶の回りにも藁を巻いて通気性のよい保温をしています。その間、木桶の中ではお酢を造る酢酸菌が上面に膜を張り、原料中のアルコールを少しずつお酢に変えながら、2ヶ月ほどかけて全く自然な状態で発酵し続けます。発酵が終了したら熟成桶に移し3ヶ月間、熟成を行います。

100年以上前から使われてきた木桶もあります。歴史を感じられます。

ミ)
この桶に入っているお酢がそのまま商品になるのですか?

北)
まろやかでコクのある最高級のお酢ができあがりますが、非常に高価で造るのに時間がかかるため、これをベースにして用途に合わせた様々な酢にブレンドしていきます。この木桶の酢の含有量が多いほど高価な酢になっていくのです。

ミ)
それにしても立派な桶ですね。使い込まれた木のぬくもりというか、柔らかさというか、温かみのようなものを感じますね。こういう道具を使って造られている食べ物はそれだけでもう素晴らしいなあと思ってしまいます。

北)
うちには100年以上前から使われてきた木桶が30本あるんですよ。底板は13センチほどの厚さがあり、回りの板も一枚が3センチはある立派な杉材を使っています。新しいものだと杉の木の香りが強すぎるので熱水をはって一年以上、置いてからでないと使えないのですよ。

ミ)
桶ひとつにも大変な手間がかけられているのですね。向こうの工場にあるプラントが通気法という製造方法のものですか?

北)
そうです。それでは今度は通気法についてご説明しましょう。この大きなタンクの中では自動制御による温度管理をしています。タービンが高速で回転して空気を吸引しながら発酵液を撹拌しているので、発酵液の中の酢酸菌が空気中の酸素に触れながら素早く増殖できるようになっています。非常に発酵が早いので、効率よく酸度の高いお酢を造ることができる方法なんですよ。

ミ)
どのくらいでお酢になっていくのですか?

北)
徹底した発酵管理によって、ほぼ24時間でお酢になります。酸味の強いホワイトビネガーやりんご酢、ワインビネガーなどを製造しています。木桶の容量は30石、約5400リットルですが、こちらのタンクには18000リットルもの容量があります。

木桶の木片
創業時に使われていた木桶の木片です。



ダボ
木の板をつなぐ「ダボ」。これも創業時のもので、長い時を経ています。

ミ)
機械化により、効率よく安定したお酢の大量供給ができるようになってきたのですね。

北)
そうですね。でも木桶による静置発酵にしてもタンクによる通気発酵にしても、発酵の状態を見て、最後に出来を確認するのはやはり人の手によるものなのですよ。いつもコクのある美味しいお酢を安定して供給していけるように、私たちは絶えず発酵の状態をチェックしているんですよ。

工場の設備
機械化が進んでも、発酵の状態の確認などは、ひとの目と手によるものです。
おすし屋さんが使うお酢です。プロも認める味をお楽しみください。

ミ)
ここで造られた美味しいお酢をベースにして、基本的な食酢や調味酢、飲用酢、マヨネーズなどが造られていくわけですね。やはり材料の中心となるお酢が美味しくなければ、加工酢も美味しいものにはならないですものね。

北)
実はうちのお客様のほとんどがお寿司屋さんなんですよ。美味しいシャリの決め手は寿司酢ですからね。ほどよい酸味とコクのある酢がなければ旨い寿司飯は作れません。

ミ)
最後にミレーのお客様に一言お願いします。

北)
創業以来、昔ながらの木桶を使って、食酢を丁寧に造ってきました。米だけで造った純米酢、酒粕とアルコールを原料に木桶で造った醸造酢、そして、様々な種類の寿司酢など、私市醸造では日常的にお使いいただける美味しいお酢をたくさん取り揃えていますので、夏バテ防止のためにもよいお酢をどんどん取り入れて健康にお役立てください。

ちらし寿司
ちらし寿司にもうってつけのお酢です。




商品
昔ながらの木桶でつくった私市醸造のお酢です。各種用途にお楽しみください。
風子 実は風子は私市醸造のお酢とは長いお付き合いをしていました。でも、当たり前のように使っていたお酢の製造工程を見せていただいたのは初めてのこと。自分の背よりも高く、人間が4人くらいいなければ手が回らないくらいの大きな木桶の中で、お酢が静かに発酵し熟成していたなんて驚きでした。

昔ながらの製法を今も守り続け、安心して食べられる美味しいお酢です。ぜひ皆さんもお試しくださいね。来週は私市醸造の中で加工されたお酢やマヨネーズなどについてお知らせします。お楽しみに!

取材者:川端 えい子(風子)
年月日:2006年7月20日