ちば醤油

風子は自然食レストランの経営という仕事柄、 日本の食文化にはとても興味があります。今回は、ちば醤油の工場の中でも特に原料にこだわり、伝統的な木桶仕込をしている旭工場に行って、昔ながらのお醤油作りについて工場長の後藤和三さんにお話をお聞きしてきました。

下総醤油が大人気。旭市にあるちば醤油の工場を見学しました。

ミレー風子)
ちば醤油さんの取材はずっと行きたいなあと思っていたので、今日は本当に楽しみにしてきました。お醤油の仕込み現場を見せていただけるなんてすごく嬉しいです。

後藤さん)
ちば醤油の本社と大きなラインの工場は香取市にあるのですが、ここでは主に有機しょうゆと下総醤油というこだわりの醤油をじっくりと作っています。有機しょうゆは原料に有機JAS認定の大豆、小麦を使い、塩も天日塩を使用しています。下総醤油の原料は厳選した国産丸大豆と国産の小麦を使用し、伝統的な木桶で自然のままに熟成させています。

ミ)
特に下総醤油は、食のエンターテイメント誌と言われているグルメ雑誌「dancyu」で醤油の食べ比べをして一位になったことで有名ですよね。

ちば醤油 後藤さん
ちば醤油の工場を見学しました。工場長の後藤さんに案内していただきました。

工場
工場の中に入っていきます。

後)
雑誌に掲載されてから急に様々なメデイアにも紹介されるようになって、注文が殺到し、実は現在欠品中なんです。昔ながらの製法で、約一年かけてじっくり発酵させるので、注文があってもすぐにお届けできず申し訳ないのですが、3月中旬からようやく絞りたてのものを出荷できる予定です。

ミ)
今、仕込んでいるものも下総醤油になるんですね。楽しみです。さっそくですが工場を見せていただけますか?

大豆を蒸している湯気
大豆を蒸している湯気が、工場内を立ち込めています。

後)
今、小麦を炒ったり大豆を蒸してたりしていることころなのでちょうどよかったです。朝早くないとこの工程は見られないのです。ではご案内しましょう。

工場内は小麦を炒った芳ばしい匂いと、大豆を蒸している湯気があたり一面にたちこめていました。

嘉永7年(1854年)創業。現在も創業当時の木桶を使っています。

後)
これが原料となる国産丸大豆です。この大豆をNK管という機械の中で蒸します。こちらの機械は小麦を炒って砕くものです。それぞれを加熱したものに、種麹を加えて混ぜます。

ミ)
この段階ではまだ塩は入っていないのですか?

後)
はい。大豆と小麦に種麹を加えたものを室(むろ)の中で3日間かけて発酵させます。室の温度は30度が適温なのですが、そのままだとどんどん温度があがってしまい、40度以上になると納豆菌が発生し、醤油麹がやられてしまうので、毎日2回「手入れ」と言って麹床を切り返していきます。

ミ)
3日かけてようやく醤油麹ができあがるのですね。

後)
そうです。その醤油麹と食塩水を混ぜ合わせたものがもろみと呼ばれるものです。この木桶の中に入っています。その階段を上がると上から中が見えるようになっていますよ。

工場長さんに案内されて、奥にある階段を上がっていくと大きな醤油桶を一番上から見下ろせるようになっていました。

国産丸大豆
材料は国産丸大豆と小麦を使っています。

小麦を炒って砕く様子
小麦を炒って砕いています。

醤油麹
醤油麹は毎日2回切り返す「手入れ」を行います。
木桶
創業以来使用している木桶。歴史が感じられます。

壁
この場所にしかない菌が働き、醤油を発酵、熟成します。ここにも味の違いがでます。

ミ)
ここから見ると本当に壮観な感じがします。こんなに大きくて古くて立派な木桶がいくつも並んでいて、この中で醤油が仕込まれているなんて!

後)
当社は嘉永7年(1854年)に創業しました。この桶は創業当時から使われているので、150年以上前のものになります。使い込まれた木桶やこの部屋の壁には見えない微生物がたくさん付着していて、それが何とも言えない醤油の美味しさを醸し出しているんですよ。

ミ)
本当ですね。この壁の感触はすごいです!一日にして成らずというか、本当に麹の歴史を感じますね~

後)
この場所にしか存在しない菌があるので、同じ製法でも場所を変えて作ったら同じ味にはならないでしょうね。ここで約一年、麹菌・酵母・乳酸菌が働いてゆっくりと醤油が発酵し熟成されていきます。均一に発酵をさせるために週一度、空気を入れて中をかき混ぜてやります。

ミ)
意外に思ったのですが、桶の中は茶色くてドロドロしていて、黒い醤油にはなっていないんですね。

後)
そうなんですよ。醤油の原液であるもろみはとても濃厚なのです。一年経ってから、このもろみを布の上に広げて3日かけて圧縮絞りをしていきます。その絞ったままの醤油を生醤油(生揚げ)と言います。これを小見川工場まで運び火入れをします。加熱して乳酸菌と酵母菌を殺さないとどんどん発酵が進んでしまうからです。また火入れによって風味を増します。その後、検査してからビンに詰め、出荷されるのです。

ミ)
確か小学校の時に醤油工場に見学に行ったはずなのですが、こういう醤油作りの工程は全然覚えていませんね。でも、私も食に携わる仕事をしているので、こうした製造工程を教えていただけると、醤油は日本古来の独特の発酵調味料なのだなあとつくづく思うと同時に、とても感動してしまいます。

材料にこだわり、蔵人の手で丁寧に作っています。ぜひお試しください。

後)
ここの工場では機械的な大量生産ではなく、職人的なカンを加えて、丁寧に醤油を作っています。今も昔ながらの製法で毎日、醤油の状態を見ながら仕込んでいるのです。実は、発酵の調整さえすればもっと早く醤油を作ることは技術的にも可能なんですよ。これだけ大量に注文があるのに生産が間に合わないとなると、普通だったら早く発酵させて回転数を上げることも考えるでしょう。でもうちは、きちんと時間をかけて丁寧に発酵させた美味しい本醸造の醤油を作ろうと決めていますので、そんな事はしないんですよ。

ミ)
醤油は日本の食文化の基本ですものね。ちば醤油さんのそういう姿勢はすばらしいなあと思います。最後に下総醤油の美味しさのポイントを教えてください。

後)
下総醤油の場合、原料が国産の丸大豆という点が大きいですね。大豆の中のたんぱく質が麹菌によって分解されアミノ酸となって旨みに変わっていくので、大豆本来の旨みがとても重要になってきます。国産丸大豆は大量生産されていないので、どうしても割高になってしまうのですが・・・。でもこの下総醤油はコクがあってまろやかで風味のあるお醤油です。

ミ)
製造工程もまたすばらしいなあと思いました。

後)
実際に製造工程を知っていただければ納得していただけると思いますが、とにかく昔ながらの製法で、蔵人たちが目で見て、匂いを嗅いで、手で触って、人の手で作り続けています。木桶や壁などにいる見えない微生物の力も借りて、当社独特の厳選されたお醤油をお届けしますので、どうぞお試しくださいね。

手作りの様子
職人のカンも加え、丁寧に作っています。

焼きおにぎり
おいしいちば醤油の醤油で焼きおにぎりを作りました。ひとあじ違います。

下総醤油
大人気の下総醤油も発売開始です。ぜひお試しください。
風子

大変長らくお待たせしましたが、ようやく熟成が終わって、下総醤油は3月中旬から発売開始となるそうです。あの大きな木桶の中から生まれた美味しいお醤油です。美味しい煮物は美味しいお醤油から!みなさんもぜひお使いくださいね!

取材者:川端 えい子(風子)
年月日:2007年2月20日