農家さんたちの励みになりたくて
農産加工品
三里塚物産 大森武徳 さん
◆地元で親しまれる「らっきょう工場」
成田空港の平行滑走路のすぐ南側にある東峰という地区で40年間、らっきょうを始め様々な有機野菜を無添加で加工している三里塚物産に行ってきました。真上を飛行機が飛ぶ騒音の中、地元では「らっきょう工場」という名前で親しまれています。取材の会場は工場前の林の中。営業担当の大森さんがテーブルと椅子を用意して待っていてくれました。
———ミレーでは三里塚物産というと、甘~いにんじんジュースが有名ですが、ほかにどんなものを生産しているのですか?
「三里塚物産のシンボルであるらっきょう漬けやにんじんジュースの他、袋詰めの落花生や、落花生ペースト、赤紫蘇ジュースや梅ジュースなど、どれも無農薬野菜を使って無添加で加工しているんですよ」
———らっきょう漬けは、どのようにつくるのですか?
「らっきょうは根も芽も切らずに洗ったら丸ごと食塩水の中に入れて塩蓋をして、そのまま4ヶ月以上地中で寝かせます。袋詰めに合わせて少しずつらっきょうを地中から小出しし、地元のおばあちゃんたちに根っこと芽を取ってもらいます。その後、一晩水につけて脱塩し、さらに洗ってから最後に酢と砂糖を加えて袋詰めするんです」
———独特の作り方にこだわっているそうですね。
「この辺りに伝わる『ころがし漬け』という伝統的な漬け方を取り入れているんです。昔ながらの低温乳酸発酵法で、焼酎のカメの中にらっきょうと塩と水を入れて転がし、地中で保存しておくのですが、品質管理が難しく時間がかかるので、この方法で作っている生産者は少ないですよ。でも塩でゆっくり乳酸発酵させることで酸味と旨味が増してとても美味しくなるんです」
千葉県のらっきょうは6月上旬が収穫のピーク。そこから順次、塩漬けしていき、通年の出荷に対応しているそう。昔ながらの製法で作った無農薬・無添加のらっきょう漬は、一般的にはほとんど流通していない貴少品です。
———無農薬でらっきょうを栽培するのは難しいそうですね。
「生育に時間がかかり、植えてから10ヶ月も畑を占領している本当に効率の悪い?野菜ですからね〜。しかも5月に入ると害虫が活発に動き始めるので、ずっと順調だったのに収穫直前に全滅なんてこともあるんです。なので栽培してくれる農家さんも減っているんですよ。うちのシンボル的な商品なのですが、栽培してくれる農家が少ない上に収量が安定しないので、あまり増産はできません」
◆千葉といえば、やっぱり落花生!
三里塚物産では、近年収量の確保が難しいらっきょうに加えて落花生の加工に力を入れているそうです。
———むき実の落花生が人気だそうですね。
「そうなんですよ。千葉はやはり落花生が土地に合っているので、とても生産量が多いですね。新規就農者や若手農家が作ってくれるものを希望に応じて全て買い取るという前提で契約し、それを殻付き、むき実の塩味、茹で落花生、ペーストなどに加工しているんです。これらの取り組みで彼らの販路の安定につながり、農業を続けてくれる人たちが増えていったらいいなと思っています」
———ペーストの落花生、すごく美味しそうですね!
「自慢の商品なんですよ。混じり気なしの無農薬落花生だけで作っています。細やかなペーストなので濃厚ですよ!砂糖も何も加えていないのに落花生の甘さが引き立っていてとても美味しいと大評判ですね」
◆震災の経験が人生の転機に
———ベテランのスタッフさんが多い中、大森さんお一人だけ、ずいぶんお若いですよね。何か働くきっかけがあったのですか?
「きっかけはやはり震災ですね。当時は、別の仕事をしていて茨城県神栖市に住んでいました。遅出で仕事に行こうとしたら突然揺れて…。給水制限などもあったので、スーパーからは水が消えカップ麺なども消え、食べるものが本当になかったですね。2週間ほどして、ようやく千葉の実家に帰ったら、つき合いのある近隣の農家さんが普通に農作業をやっていて驚いたんです。もちろん状況は大変でしたが、水もあるし保存している野菜や米もあって、生活が普通に営まれていました。それを見て農村と街中の、この違いはなんだろうって疑問に思いましたね。もともと農村地帯で育ったのですが、食べ物が身近にある暮らしがこんなにも豊かなんだと改めて認識し、それまでの仕事を退職させていただきメンバーに加えていただきました。三里塚物産は地道に作るだけで、営業や広告などには力を入れていなかったのですが、今までの経験を活かして販路の拡大などに取り組んでいます」
私自身も、先の震災ではお金があっても食べ物がないとどうすることもできないという現実を痛切に感じました。そして食べ物を作り続けていくことの大切さや、作ってくださっている方達を支え続けていくことへの認識も改まったことを憶えています。三里塚物産が加工品を生産し続けることが次世代を担う農家さんたちの励みにつながっていくといいですね。
三里塚物産のらっきょう漬は、立ち上げ当時から変わらない、昔ながらの製法で作り続けている開拓者魂の込められた商品。ぜひ一度、手に取って味わってくださいね。ちなみにこのらっきょう漬けは、タルタルソースを作る時に刻んで加えるとすごく美味しくなるそうですよ〜!
(風子)
【取材後記】
私のらっきょう好きが遺伝したのか、三里塚物産の「らっきょう田舎漬」がわが家の食卓に出ると、子どもたちはいつも取り合って一袋ペロリと完食します。
前から袋のデザインが古めかしいなと思ってたので(笑)、思い切って聞いたら「これが良いんです。この雰囲気も含めてうちの味なんです」と、目からウロコが落ちました。ミレーもそうですが、この自然体な感じが私は好きです。
取材の後半、ジュース担当の立川さんが来て「梅ドリンクできたから味見してよ。しそドリンクの時も早川社長の舌に助けられたんだ」と、ミレーと三里塚物産の付き合いの長さを知ることができました。
この取材をきっかけに、「ピーナッツペースト」と「梅ドリンク」が新発売し「しそドリンク」も復活します。秋になれば、むき実の落花生も出ます!ミレーのサイトをお見逃しなく♪
編集責任者 中村 彰宏
米粉麺の落花生ソースがけ
- ■材料
- 米粉麺:1玉
- ピーナッツペースト:適量
- 醤油:大さじ1
- 酢:大さじ1
- ごま油:大さじ1
- 砂糖:小さじ1
- 野菜(レタス、きゅうり、にんじん、トマト、アボカド等)
①野菜は細かい千切りにしたり適当な大きさにちぎったりしておく。
②お湯をわかして麺を茹で水に晒して冷やす。
③ピーナッツペースト、醤油、酢、ごま油各大1、砂糖小1をよく混ぜてタレを作り麺にかけて刻み海苔をふりかける。
お好みでナンプラーを少々入れたりパクチーや落花生を刻んで乗せたりしても美味しいです。中華麺でも大丈夫ですよ♪
レシピ担当:古民家空間「風楽」店主 風子