工夫、工夫の積み重ねです
トマト・ミニトマト
千葉県旭市 林 完治 さん
◆実は冬が本番?濃厚なトマト
旭市と旧干潟町の境界際に建つ何棟もの立派なビニールハウス。一年を通してトマトを栽培している林さんのハウスにお邪魔してきました。中はトマトの枝が長く伸び青々とした葉を茂らせたグリーンのカーテンが一面に広がっていました。
「やっといい状態になってきたよ。これからいよいよハウストマトの旬だからね。昨年は台風で停電したり、日照不足だったり、かなり大変だったんだよ」と開口一番。 林さんのトマトはロックウールという石の繊維を敷いた中に苗を植える「養液栽培」という形をとっています。土の代わりにロックウールを使うことで保水性が高まり、安定して栽培できるということです。
---トマトは夏が旬のイメージがありますが、林さんのトマトは冬から春にかけてが美味しいのですか?
「露地トマトは夏が旬だけど、うちはハウス栽培なので8月に苗の植え変えをしているんだよ。夏は暑いから生育も早く9月中旬には出荷できるんだけど、本当に美味しいトマトは時間をかけてゆっくり育ったものなんだ。冬は温度が低いので生育に時間がかかり、トマトの花が咲いてから3ヶ月たってからトマトが実るんだ。その分、じっくりと栄養を蓄えるから、甘くて味の濃いトマトができるんだよ」
---種類もたくさんあるのですね。
「赤や黄色、緑色、紫などいろいろな品種が10種類以上あるね。中でも桃太郎や華小町、加工用で酸味の強いシシリアンルージュなどの栽培量が多いかな」
◆機械と人の手、両方で育てる
「このパソコンを見てごらん。これで温度や日照時間、湿度、CO2まで管理できるんだ。トマトが育つ最適な環境を機械化によって整えられるよう設備投資をしたんだよ。だからパソコンの画面を見れば今この中がどんな状態かすぐにわかるよ」
---養液栽培とオートメーション化。すごく先進的なトマト栽培ですね。
「積算温度(生育日数の各日の平均気温の積算値)で管理してるから生育状態がわかりやすいんだ。温度が高くなったらハウスの窓を開けたり、CO2が必要になったら灯油ヒーターをつけたり、たえずベストな環境を用意して健康な状態を保ってあげられるんだ」
---機械化により、どんなメリットがあるのですか?
「もともとロックウールはオランダの技術なんだ。それを日本に取り入れた農家が静岡にあって見学に行ったんだけど、地域ごとに外気温や湿度が違うから導入してもその土地の状態によって栽培方法が異なるんだよ。気温が低い時はロックウールの下にある配管に温水を流し保温したり、加温したりして調整するんだけど、静岡のやり方をそのまま千葉でやってもうまくいかない。この辺りにはまだこの方法で栽培している農家がいなかったから、試行錯誤しながら学んでいくしかなかったね」
みごとなグリーンカーテンの下には養液栽培の床があり、林さんはそれを「ベッド」と呼んでいました。本当に快適なベッドで元気のいいトマトたちがスヤスヤと眠り、すくすくと育っているという感じでした。
---もともと機械がお好きなのですか?
「そうだね。だからハウスの配線や機材の設置などは全て自分でやったよ。農家っていうのはね、なんでも自分でやらないとね」
◆安心のために工夫がたくさん
---ハウス内には無駄な葉っぱや土が散らばっておらず、とてもきれいに整備されているんですね。
「掃除機もこまみにかけているよ。葉っぱが枯れるとカビが発生するんだ。農薬をできる限り使わないためには、病気の原因を持ち込まない・すぐに取り除くというのが鉄則だね」
---オゾンも活用していらっしゃるそうですね。
「夜間にオゾンを発生させて除菌やカビ対策にしているよ。オゾン効果なのか、うちのトマトは完熟で出荷しているのに腐りにくくて日持ちすると言ってもらえるよ」
---ハウス内にはハチも飛んでいるんですね。
「機械化しても受粉はなるべくマルハナバチに任せているんだよ。ホルモン剤を使用するよりも、やっぱり味が良くなるんだよね。ハウスの中には害虫対策で粘着性のテープをつるしてあるけれど、ハチは高くまで飛ばないから、テープにくっついてしまうこともないんだよ」
収穫も手作業。ヘタをハサミで切る際、切り口が傷むとカビが発生する原因になるため慎重に行います。
「まだ息子が小さい頃、このハウスは格好の遊び場でね。毎日中で走り回っているから、あまり化学農薬を使わないで栽培したかったんだ。そんなこともあったから、いろいろな方法をためしながら、農薬に頼りすぎずに美味しいトマトを作りたいと思ったんだよ。うちのトマトは化学肥料も必要以上に与えないから、硝酸濃度も低く抑えられているんだよ」
---最後に、ミレーのお客へ一言お願いします。
「お客さまの感想が、一番励みになります。美味しいトマトを工夫しながら作っているので、どんどん食べてほしいですね」
冬の料理は色彩がどうしても暗くなりがちですが、トマトの鮮やかな色がちょっと入るだけで美味しそうになりますね。どうぞ林さんのトマトをお試しくださいね!
(風子)
【取材後記】
風子さんと共にハウスに入った瞬間「すごい!きれい!」と、びっくりしました。ずらーっと整列したトマトのつる。歩く道も、落ち葉すら無い清潔感。ハウスの屋根もピカピカ。 「なんでこんなにきれいなんですか?」と聞くと、ハウスと言っても日照が無いと育ちが悪くなるので、雨の日に登って磨くとの事。地面もきれいなのは、葉が枯れると病気を広げるから。 美術館のようなハウスは、几帳面で真面目な林さんの性格そのもの。「ミレーのトマトといえば林さん」というほど林さんを信頼しているのも、林さんの安定した管理と品質があってこそ。 林さんのトマトは冬こそおススメで、イチオシは、昨年から林さんが始めた「サンマルツァーノリゼルバ」。イタリアの伝統的調理用トマトで、かぶと豚肉と一緒に炒めたら、食感とうま味にびっくりしました。お弁当にもぴったりです!
編集責任者 中村 彰宏
ミニトマトのキッシュ
- ■材料
- ミニトマト:適量
- しめじ:1パック
- 玉ねぎ:約半分
- 蒸したさつまいも(角切り):適量
- 卵:1個
- 生クリーム:適量
- 冷凍パイシート(18cm型):1個
①パイシートをタルト型に敷き詰めフォークで穴をあける
②玉ねぎはスライスしほぐしたしめじと一緒にバターで炒め塩こしょうする
③卵と生クリーム100ccをよく混ぜ塩こしょうしタルトに流し入れる
④野菜を加えてあればチーズも少々加え200度のオーブンで25〜30分焼く
⑤上からパセリを散らす
酸味が強く加熱しても味が濃いシシリアンルージュがおすすめ。パイシートを使って簡単にできますよ♪
レシピ担当:古民家空間「風楽」店主 風子