親父と同じ道で違う事をするんだ
アイスプラント
千葉県成田市 川島 寛信 さん
◆親父が作らない野菜にチャレンジ!
ミレーのすぐご近所、川島寛信さんのハウスにお邪魔してきました。寛信さんは、みみずの会のベテランメンバー、川島幹男さんの息子さんで、ほうれん草など葉物が植えられている隣りでアイスプラントを作っています。
———こんにちは!この辺りでアイスプラントを作っている方は珍しいですよね?
「そうだね。これは俺の趣味みたいな感覚で作ってるんだ(笑)。親父は有機農業の大ベテランだから何を作ってもその経験には勝てないでしょ?だから親父の作っていない葉物を栽培してみようかなと思って始めたんだ」
———以前お父様の取材に来た時、寛信さんはハウスでお花を作っていらっしゃいましたよね?
「そうなんだよ。野菜ではない何か違うものを栽培したいなと思い、ハウスを加温して花をやっていたんだよ。トルコ桔梗やデルフィニウムなどちょっと値のはる花を栽培してたんだ。花の栽培は面白かったんだけど、燃料の値上がりなどでやっぱり厳しいなと思って、30歳を境に栽培するものを有機野菜に切り替えていったんだ。花を作っていた時の立派なハウスが残っているから、それを利用して葉物を栽培しているよ」
◆ユニークな野菜が作りたくて
———どうしてアイスプラントを選ばれたのですか?
「珍しいでしょ?このあたりで作っている人も少ないしね。一般的にアイスプラントは水耕栽培が多いんだよ。土に植えると重金属まで吸い上げてしまうので土耕栽培は向かないと言われているけど、うちは有機栽培だし土壌検査もしているので土も安心だからね。他の葉物と一緒のハウスだから、土も同じ状態で堆肥は豚ぷんをベースに有機肥料やぼかしなどを加えて育てているよ。」
———作っている人も少ないのでしょうか?
「このあたりだと、まだ珍しいみたいだね。それに作る人や場所、生育環境によってかなりアイスプラントの状態が変わってくるみたいなんだ。知り合いが作っているのは、少し黒っぽかったな。うちのはかなり肉厚で色もキレイだと思っているんだけどね」
———葉先がとても傷みやすそうですね。収穫は手で摘むのですか?
「そうなんだ。日中はしおれてしまうので、朝に収穫するんだ。わき芽を摘んでいくと次々に生えてくるんだけど、葉が成長しすぎて地面につくと、そこから傷むし、表面の塩の粒がきれいにつかなくなるので絶えず葉には汚れがつかないように気をつけているんだ。その分、他の葉物みたいに水洗いする必要はないよ」
———とてもデリケートな野菜に見えるのですが、栽培するのは大変ですか?
「そんなことはないよ。環境さえ整っていれば意外と丈夫で育てやすいんだ。南アフリカ原産なので水もかけないしね。寒さにも比較的強いんだけど、マイナスになっちゃうと厳しいので、この時期はハウスの中でも二重トンネルにして育てているよ」
———種まきは、いつ頃行うのですか?
「夏にはハウスを太陽熱で病気・害虫対策をするから、お盆明けくらいに種を蒔くよ。最初はかなり水をたっぷり吸わせ、10月頃に定植して、一ヶ月ちょっとで収穫が始まり11月末から6月までかなり長い期間、出荷できるんだ。種も最初は買っていたんだけど、今は自家採種しているよ。アイスプラントの種は4年持つと言われているし発芽率が高いんだよ。それに種を採ると自分の好きなように作れるでしょ?(笑)ただ、花が咲いたら味が落ちるので、収穫する分と種取り用は分けておくんだ。種取りするといつまでもハウスが片付かないけど、7月上旬には種をとって大事に保存しているんだよ」
◆適度な「塩気」を、お楽しみください
———アイスプラントの独特の塩気は、どのように作られるのでしょうか?
「栽培期間中、畑に塩水を蒔いて育てるんだよ。収穫がはじまったばかりの11月頃は、まだ塩分も控えめなんだけど、年明けの1〜2月頃にちょうどよく塩がのってくるね」
———他の野菜のすぐ近くで育てているということですが、塩害などは起きないのですか?
「塩水を蒔いても、アイスプラントが地中から塩分を吸い上げて、葉の表面の塩粒にするので、ほとんど地中に塩分が残らないみたいなんだ。だから、近くに他の野菜を植えても大丈夫なんだよ」
———本当に不思議な野菜ですね。栄養も豊富なのですか?
「育てるばかりで、あまり栄養のことは詳しく知らないんだけど、βカロテンがレタスの3倍もあるんだって。カリウムやミネラルもたっぷりだしね。それとイノシトールという機能成分が含まれていて、抗酸化作用や血糖値の低下作用などがあるらしいよ」
———やっぱりオススメはそのまま食べることでしょうか?
「茹でると溶けちゃうんだよ(笑)。衣をつけて天ぷらができるって聞いたけど、試したことはないな。青くささもないし、生で食べてもらえるのが、一番おいしいと思うよ」
適度な塩気があるのでドレッシングなしでもいただけるそうです。シャキシャキとした歯ごたえが楽しめる生食で、まずはお試しくださいね。
(風子)
【取材後記】
川島さんのアイスプラントは色々なお店に出すとの事ですが、形や見た目を細かく指定されると「そんな言うなら出さないよ」と、断るそうです。自分のスタイルをつらぬく姿は頼もしいし、ミレーに出して頂いている事に感謝です!アイスプラントの栄養分はサプリメントにもなる程で、女性を中心に注目されているようです。土の養分を何でも吸い上げる力は、まさに「みみずの会の土を食べる」ことができる野菜なのだと見方が変わった取材でした
編集責任者 中村 彰宏
アイスプラントのカプレーゼ
- ■材料
- トマト:1個
- アイスプラント:適量
- モッツァレラチーズまたはカマンベールチーズ:適量
①トマトは薄い輪切りにする
②アイスプラントとチーズをトマトと一緒に盛り付ける
③上からレモン汁小1とオリーブオイル大2を合わせたものをかける
④ブラックペッパーをふってできあがり
アイスプラントの塩味を活かして、ドレッシングなどは控えめにお試しくださいね♪シャキシャキ食感が楽しめます。
レシピ担当:古民家空間「風楽」店主 風子