みんなの力で大賞受賞!
農産加工品
笹川なずな工房 圓城寺 央 さん
◆のどかな場所で心を込めて作ります
利根川の河口から20キロほど上流にある香取郡東庄町。ミレーと同じ香取郡でも、北は利根川を隔てて茨城県で、川と田んぼに囲まれた田園が広がる農村地帯です。冬でも温暖で自然に囲まれた静かな環境を生かし、障がいを持った方たちの働く施設が多く建てられている地域でもあります。その中の一つである、笹川なずな工房、作業指導員の圓城寺央さんにお話を伺いました。
———こんにちは。本当に景色がいい場所ですね〜。
「母体は船橋にあるさざんか会という社会福祉法人なのですが、この地域にもぜひ作ってほしいという多くのご要望があったので、平成14年により地域密着型の施設としてこの場所に建てられました。都市型の施設とは違って、目の前には水田が広がり、木のぬくもりのある建物で、本当にいい環境だなあと思います」
———障がいを持っている方達が通っているのですね。
「正確には通所授産施設という名称です。公立の支援学校を卒業した知的障がいの人たちが企業に向けて就職活動ができるように指導しています。約30人ほどの皆さんが自分たちで電車やバスに乗って佐原、小見川などから通っています」
———主にどんなお仕事をするのですか?
「農産加工班と製パン班に分かれて作業をしているのですが、ミレーさんに出しているジャムは農産加工班が作っています。いちごやブルーベリーなどのジャムの他、らっきょうの甘酢漬け、南高梅の梅干しなどの加工品を作っています。梅は外部から取り寄せていますが、その他ほとんどの素材は地産地消で地元の農産物を使っています。ブルーベリーはうちの畑で栽培しているものを使っているんですよ」
———農産加工班は何人いるのですか?
「利用者さんが14人で指導員が6人です。ここに通っている一番若い人は支援学校を卒業したばかりの18歳。一番高齢は59歳になります。その人のできる作業に合わせて、楽しく仕事ができるように指導員も一緒にがんばっています。厨房での加工だけでなく、ラベルを貼ったり、掃除をしたりといろいろできることを分担しながら作業しているんですよ」
◆なずな工房のジャムが大賞を受賞!
———いちごジャムが特に人気と伺いました。
「はい。東庄町はいちごの名産地なので道路沿いにはいちごの直売所や観光いちご園などがたくさんあります。うちのいちごはアイベリーという甘いいちごを使っていて、摘み取りなども利用者さんと一緒に行っています。季節が限定されるので、旬のうちに摘み取り、鮮度を保つためにグラニュー糖をまぶして冷凍することで、一年を通して、いちごジャムが販売できるようになりました」
———おいしさの秘密を教えてください!
「無添加でグラニュー糖だけを使って丁寧に煮詰めているということでしょうか(素材によってはレモン果汁を加えるものもあります)。もちろん収穫から加工、製造まで全て手作業でみなさんと一緒に一生懸命作っています。糖度50度なので一般的なジャムに比べると甘さは控えめですが、素材の味が生きています。水に電解還元水を使っているので、素材の成分に浸透しやすく旨味や香りを引き出してくれるようですね。障がい者就労事業振興センターという組織で、毎年、障がい者の施設で作られた商材の逸品コンテストがあるのですが、ジャムの美味しさを評価されて2010年に『はーとふるメッセ・オブ・イヤー』の大賞を受賞しました」
———ジャムはどのように作るのですか?
「いちごは毎回5kgずつ煮るのですが、砂糖をまぶして冷凍してあるので、それを解凍してステンレスの鍋で煮詰めていきます。アクをとりながらよくかき混ぜ、グラニュー糖を加えて完全に溶けたら、糖度が50度になるようグラニュー糖の量を調整しながら加えていきます。仕上げにレモン汁を少々加えて出来上がりです」
———パッケージデザインがとてもおしゃれですね。
「そうなんです。見た目でも楽しんでいただけるよう、デザインはとても大切ですね。デザイン支援プロジェクトのきっかけをいただき、広告業界では世界的にも著名な副田高行さんにデザインしていただけました。とても光栄です。いちごは『愛してる。アイベリー苺ジャムさん』という赤いラベル、ブルーベリーは『ありがとう。ブルーベリージャムくん』という紫のラベルにするなど、既存の概念にとどまらないビビッドな色彩で目を引き、とても好評で、私たちもとても気に入っているんです」
◆理解の輪を広げたい
———主にどちらで販売されているのですか?
「道の駅や直売所、地元の産業祭りなどで販売しています。イベントの時は利用者さんも一緒に販売に行くので、励みになっているかなと思います。作ったジャムは製パン班の菓子パンの材料としても使われているんですよ。販売した分だけ利用者さんの収入になるので、たくさん売れるとやはり嬉しいですね」
———みなさんにお伝えしたいことはありますか?
「障がいを持っている人たちと一緒に素材の味を生かした手作り製品を一生懸命作っています。みなさんにもいっぱい食べていただきたいですね。そして障がいを持っている人たちのことを少しでも知っていただける機会になればと思っています。無添加で甘さ控えめのジャムは、なずな工房の自信作ですので、一度味わっていただければと思います」
緑に囲まれたなずな工房は本当に環境抜群な場所に建っています。目の前に広がる美しい田園風景をみながら、仲間たちと作業をしているみなさんはとても生き生きと楽しそうでした。ぜひ、なずな工房のジャムをお試しくださいね。
(風子)
【取材後記】
私の過去の職場にも障がいを持っている子がいて、いつも笑顔で話をしてくれたのを思い出しました。なずな工房のみなさんも挨拶がとても元気!そして根気のいる作業を楽しそうに繰り返す姿が、このジャムの純粋な味に表れている気がして、私は好きです。ミレー事務所で柚子ジャムをお湯で溶かして「柚子湯」をしたら好評でした。喉にもやさしいですよ♪
編集責任者 中村 彰宏
サイコロフレンチトースト
いちごジャム添え
- ■材料
- 食パン:2枚
- 卵:1個
- 牛乳:100cc程度
- バター:適量
- いちごジャム:適量
①食パンを適当な大きさに角切りにする
②卵と牛乳をよく混ぜて食パンを浸す
③フライパンにバターを熱して②を焼き、途中で返しながら全面を焼けるようにする
④焼けたらお皿に盛り付けて蜂蜜の代わりにジャムを乗せていただく
卵液の中にお好みで砂糖を少々加えてもOK。最初にサイコロ状にカットしてから焼くと食べる時に楽ちんです♪
レシピ担当:古民家空間「風楽」店主 風子